------------

「動物園?」
 怪訝な顔をするヴォルは今日ダドリー達が出かけるのは知っていたが、まさか自分らもいくとは考えていなかった。
 いつも通り、近所な猫好きなおばさんの家に預けられるものとばかり思っていたが、どうやらそのおばさんが足を折ったとかであずかれないらしい。
 だったら家に置いていけばと思ったが、家の中がめちゃくちゃにされちゃかなわないと言って、二人を車に乗せた。
 途中、ダドリーの友人も乗せると、座る席が一つ足りないことに気がついた。
今更引き返すのも、と考えていたバーノンだがこれ幸いにとヴォルはハリーを自分の膝の上に座らせる。
「だっだめだよ!重いよ!」
「重くない。大人しく座ってないと危ないよハリー。」
 足元でいいから、というハリーをがっちり捕まえ、座らせるヴォルはハリーの耳元でささやく。
仕方なく大人しくなるハリーに機嫌を良くするヴォルは隣にいるダドリーを無視し、窓の外を眺める。
 
 パフェが小さいと癇癪を起したダドリーのお下がりでパフェが二人の間に置かれるが、ヴォルは甘いのは嫌いだと言い、子供ではあるもののバーノンらと同じくブラックコーヒーを飲む。
 ハリーはめったに食べることのできない甘味にニコニコと嬉しそうに笑う。
 対象的な二人だが、どこか似通った雰囲気にバーノンは不審な目で居候二人を見ていた。
彼自身、ヴォルが何者かはわかってはいない。
ただ、手紙を無視してどっかに入れようとしたところ、ハリーから引き離したとたんに赤ん坊は泣き出し、近くの花瓶が粉砕された。
 驚いた職員はそのまま赤ん坊を置いて逃げ去り現在に至る。
 
 
 爬虫類を集めた施設に入ると、ヴォルはハリーと共に蛇を眺めていた。
「俺は飼うなら蛇が欲しいな。」
「本当にヴォルは蛇好きだよね。でもわかるかも。」
 笑いあいながら見つめる二人にガラスの向こうの蛇が興味を持ったのか近づいてくる。
『シュッシュ…こんにちわ。少年達。』
「こんにちわ…って…君、しゃべれるの?ヴォル、聞いた?」
「あぁ。驚いた。なんかそういう装置でも付いているのかな?」
 突然聞こえた声に驚く二人はきょろきょろとあたりを見回し、お互いの顔を見る。
「君はどこから来たの?」
 ハリーの問いに蛇は尻尾でガラスをたたく。
【この蛇は当動物園で産まれました】
「あぁ、野生ではないのか。やっぱり生きている餌の方がいいのか?」
『シュシュ…動かない固まりしか食べたことはない。』
 ヴォルの問いに蛇は生きた餌?と鎌首をかしげ、首を振った。
へぇ、と感心する二人だが、ダドリーの声が響き、びっくりして振り向く。
「あいつら蛇としゃべってる!!どけよハリー!」
 大声を上げるダドリーは駆け寄ってくるなり、ハリーを突き飛ばし、ガラスにへばりつくように蛇を見つめた。
「ハリー!」
 したたかに腕をすりむいたハリーにヴォルは慌てて駆け寄るとガラスに指紋を付けるダドリーを見つめる。
 不意にガラスが消え、ダドリーは太った体を支え切れずに、中に転がるようにして入るときょとんとした顔で目を瞬かせた。
「さっさと自由になればいい。」
 低く呟くヴォルに蛇は驚く人々をしり目にありがとう、と消えていった。
「ハリー!?腕大丈夫か?他にけがは?」
 擦り傷を確認するヴォルは他にけがはないことを確認すると憎悪のこもった目をダドリーに向ける。
「大丈夫だから。それより…今のガラス…。」
「あ、あぁ。そういえば…。ハリー…傷が…。」
 何が起こったのかわからない人々共に、二人は顔を見合わせるが答えは見えない。
腕についた擦り傷がみるみる治ったことにさらに二人は眉を寄せることとなった。
 
 
 動物園の謝罪に対しバーノンはどなり散らし、家に帰ると居候二人に怒鳴り散らす。
何が起きたのかさっぱり分からないヴォルも困惑気にハリーと顔を見合わせ、ひたすらにすみませんと謝った。
 とりあえず、と夕食抜きと言われて2階の部屋に戻ると、ヴォルは腕を組んで考え込んでしまった。
こうなるとしばらくは自分の思考の渦の中、帰ってこないとあきらめるハリーは自分の腕を見つめていた。
「ねぇヴォル…僕ら…何か不思議な力でもあるのかな…。ほら、髪の毛だって変に切られると元に戻るし…。」
「あぁ。昔から少し気にはなってた。」
 疑問を呟くハリーに珍しくヴォルからの返答があり、ハリーは顔を上げた。
「実を言うとハリー。少し前にこんなことができることに気がついたんだ。」
 みてて、と言うと目を閉じ、何かに集中する。首をかしげるハリーだが、その体が浮いていることに目を瞬かせた。
 ヴォルが力をぬくと自然と降りることになったが、確かに天井近くまで浮いていた。
「ちょっとコツがいるし、やると疲れるけど…。朝階段踏み外しそうになった時に気がついた。」
「すごい…。魔法みたい…。」
 小さくため息をつくヴォルにハリーは目を輝かせると、同じように目をつぶり、力を込めてみる。
可愛い、と心の中で呟くヴォルはくすりと笑った。
「ハリーだってきっと力がある。そんな気がする。」
 できない、と小さくつぶやくハリーの頭をなで、そっと寄り添うとハリーはそうだといいな、と笑う。
「バーノン叔父さん達知ったら驚くね」
「このことは二人の秘密にしよう。何も教えて余計に気味悪がられる必要もないさ。」
 下の階に聞こえないよう、小さく笑うと額をつき合わせた。






≪Back Next≫
戻る