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 静まり返った住宅街。
そこで一軒の家を見つめる女性と一人の老人は空からやってきた大男に目を止めた。
バイクから降りる大男は抱えていたものを老人に手渡す。
「これは…!どういうことじゃ…。なんと…」
 受け取った老人…ダンブルドアはすやすやと眠る赤ん坊を見つめ、困ったようにうなる。
目を閉じ考えるダンブルドアは玄関先に赤ん坊を下ろすと手紙を取り出した。
杖で一度たたくと中身を変え、そこに手紙を置く。
「アルバス、あの…あの二人の赤ん坊はいったい…。ポッター家には赤ん坊は一人…そうですよね。」
 玄関先に置かれた“二人の赤ん坊”に眉を寄せ、困惑するマクゴナガルにダンブルドアはおそらくは、と口をひらいた。
「あれは…人生をやり直さねばならないものじゃ。わしが救えず、変えられなかったものじゃ。」
「まっまさか…。」
「あやつは…魔法界の闇が生んだようなものじゃ。」
 静かなダンブルドアの言葉に絶句する大男…ハグリッドとマクゴナガルは恐れたように肌の色が白い赤ん坊を見つめる。
 ダンブルドアの決断に二人は何も言えない。
やがて朝になり、戸を開けた住人はおかれた二人の赤ん坊に驚きの声を上げることとなった。
 
 
 朝になり、窓から差し込む日差しに飛び起きた黒髪の少年は眼鏡をかけるとなるべく音をたてないように扉を開け、階段を駆け下りる。
キッチンにはすでに一人の少年が入り床掃除を始めている。
「ごめん!あぁえっと、玄関周りやるね。」
「その前に朝の挨拶。おはよう、ハリー。」
 眼鏡の奥で緑色の目をきょろきょろと動かす少年ハリーはあわただしく掃除の準備をしようとし、赤い目の少年に呼び止められる。
「あ、おはようヴォル。」
「あぁ。早くしないと今日はダドリーの誕生日だ。ゴミが落ちてたらなんて説教されるか。」
 だろ、というヴォルにうなずくと二人は黙々と掃除を開始した。
もうすぐ終わるところで叔母が下りてきて、掃除の出来を確認すると朝の支度を始めた。
やがて大柄な叔父バーノンと最後にちょうど朝ごはんができたタイミングで降りてきたいとこのダドリーがリビングン入る。
「ハリー!ベーコン焼いて!焦がしたら承知しないよ!」
 叔母の声にベーコンを焼くハリーは自分達の分とパンを焼くヴォルをちらりとうかがう。
向こうの部屋ではプレゼントの数がどうのこうのでダドリーが癇癪を起し、それを叔母ペチュニアがなだめている。
 ベーコンを皿によそい持っていくとバーノンはさっさと向こうに行けと態度で示し、ハリーはおとなしくパンが焼き終えたヴォルの隣に座る。
「まったく…プレゼントの数ぐらいで癇癪なんか起こして…あほらしい。」
「まぁダドリーはそれが楽しみらしいから…。」
 ぼそぼそと二人でダドリーのことを言うと、面倒になる前にさっさと食べてに庭掃除をしに外に出ようと自分らの食器を片づける。
 勝手口から庭に出ると草むしりを始める二人はまだ日が高くないことから先に日の当たる場所を済ませていく。
 土で手を汚しながら黙々と作業すると、あらかた終わりヴォルは辺りを見回した。
ふと、ハリーに目を止めると泥が、と顔を近づけた。
ぬき方にコツがあるのか、彼に手はあまり汚れていない。
  黒い髪が飛び跳ねているハリーの髪にそっと手を添え、碧色の瞳を覗き込むと頬についた土を指で拭う。
 赤い目が特徴的なヴォルに至近距離で見つめられ、ずっと一緒にいるとはいえハリーは若干顔を赤らめながらありがとうと礼を言った。
 
 いじめっこのダドリーがガキ大将のような人気とは違い、ヴォルは端正な顔立ちと冷めた態度から女子たちに人気が高い。
 本人はハリーがいればそれでいいと言ってきかないため、彼の優しさを受けるのはいつもハリーだけ。
 そのおかげでハリーは女子たちから嫉妬の目を向けられている。
そして、頭がよく、ダドリー達がいつも言いくるめられる悔しさから、ヴォルがいないとハリーはいつも標的にされていた。
 二人そろって親がいないため、ハリーの叔母夫婦の家に預けられているということだが、ヴォルの両親の話は不思議なことに叔母も知らないという。
 ハリーが預けられた時、彼も一方的に預けられたのだと言って、この家では厄介者扱いだ。
 
「小僧ども!掃除を終わらせてさっさとこっちに来い!」
 ハリーが顔を赤らめ、困っている様子を楽しんでいたヴォルは表から聞こえたバーノン叔父さんの声にあからさまに不機嫌な顔をし、舌打ちをする。
 結構わがままで、自分の思い通りにならないと気が済まない彼はすぐさまただの優等生です、と言った顔を取りつくろうと深緑色の髪を翻し今終わりました、と声を上げた。
 彼がハリーに執着する理由はなんとなく、とはぐらかされるが、本性を見せるのもハリーの前だけだ。





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