星を紡ぐ蛇

注意事項:
現状のところ予定どまりですが、ヴォルデモート→ハリーの描写が入る予定です。
また、今回は物語の進行上に年齢制限が設けられる予定となります。
読んでいる途中でこうじゃなかった。
スネハリ以外は無理。
等のことが発生すると考えられまるので、予めご承知おきください。

1:戻ってきた男の子

 あちらこちらが痛い、と雨で冷えていく体を自覚していると複数の大人の声が聞こえ、そこで意識を途絶えた。目を覚ました時には清潔なシーツの上で、体もあちこち治療されている。

「ハロルド……君かな?手に持っていた箱に書いてあった名前だけれども」
 ほらこれ、と女性に渡されたのはどこか古びたトランクで……ハロルドははっと目をしばたたかせた。

「ここ、どこですか?今いつですか?ハロルドって……僕のことですか?」
 わっと流れていく多くの記憶に顔をしかめながら、看護師のような服装の女性に尋ねる。困った風に医師と顔を見合わせると1985年と、答えた。呆然とした風のハロルドにいくつか質問するも、ハロルドはここに来るまでのことは覚えていないと首を振る。

 トランクに書いてある名前と、ハロルドの服から出てきた羽ペンに刻まれたH・Pのイニシャルからハロルド=ポーターという名前が付けられ、家族が見つかるまでと児童養護施設に入ることになり、与えられた個室でハロルドはトランクを見つめた。
 
 ハロルドというのは誰かに見つかっても誤魔化せるようにと、ロンのロナルドから閃いてつけた偽名だ。まさかそれが本当の名前になるなんて思いもよらなかった、と剥げかかっている名前を撫でる。

「まさか本当に転生しちゃうなんて……。アルバスとスコーピウス……本当にまたやってくれたな」
 ため息をつきつつ、笑いそうになるのを堪える。まさか本当に、と古いトランクはマグルの目にはただの見窄らしい箱にしか見えないらしい。それに鍵かかかっていたため、開けることはできなかったようでほっと溜息を零し、カチャリと開く。

 中には几帳面な親友の字や、たまに自分でも読めなくなっていた親友の字、そしていつのまにやらつるむようになったやや神経質な親友の字と……見慣れた自分の字が書かれた羊皮紙がたくさん入っていた。

 そして一見小さな財布に見える袋。もし本当に転生したらお金困るよね、と各々が持っていたへそくりやら何やらを詰め込んだ、グリンゴッツかな?と思うそれは覗いてみればやっぱりグリンゴッツだ。マグル避けがしっかりされているのと、他人が近づくと縮むので盗られることはないだろうがそれでも、だ。

 逆タイムカプセル。

 そういう名前だったこのトランクに、本当のタイムカプセルに物を入れるようにうまく行ったらという希望と終活をしながら懐かしい思い出の品を入れて行ったために結構な荷物を入れていた。

 なんでこんなものまで入れているんだ、と呆れるのは直毛薬の改良版だ。飲めば半年は持つというのも、ポッター家にあったレシピをジョージに渡し、改良した……w・w・wのまともな商品ラインナップの一つだ。裕に10年分は入っているそれにため息をつき……備え付けの鏡を見る。

 5歳のハロルド=ポーターは見慣れたくしゃくしゃの髪に、緑の眼とほぼ昔のままの姿だ。極めつけに、うっすらとしてはいるが傷もある。確かに、このままではこの世界のハリーのそっくりさんになってしまう。それはさすがにまずいだろうと髪を撫でつけて……ぴょんと跳ねる髪に苦笑いがこぼれる。


 がさかさと中を確認していると、見たことのない布に包まったものを見つけた。なんだろう、と解いて行けば5つの額縁が入っている。1つだけ横が長いもので、肩幅ほどの大きさで、残りの4つはA5位の大きさだった。

「ハリー。まさか本当に転生しちゃった?」
 突然聞こえた声に慌てて裏返せば、上品なドレスローブを着た、懐かしい大臣姿の親友が手を振っている。まさかと思い残りをめくるといつものラフな姿のロンとどこか気取った風な服装のドラコ。そして……。

「やぁハリー。突然ハーマイオニーに呼ばれて、僕の薬草学の知識が必要になるかもしれないからって。マグルで記念日に埋めるタイムカプセル?というもの説明を聞いてなんだかおもしろそうだなって。どこまで僕が力になれるかわからないけれども、よろしく」

 教授となりすっかり落ち着いた様子のネビルが、変わらないニコニコとした顔でハリーに笑いかける。いったん集まろう、というロンの声と共に4人は移動し、あの誰もいない大きめの額縁にあるティータイム中のような白い机を囲むように配置された椅子に座る。ドラコ、ハーマイオニー、ロン、ネビル。まさか会えるとは思ってもみなかったハリーは皆、と声を詰まらせ、一人じゃないことにほっと息を吐いた。

「状況を聞きたいのだけれども。ハリー、今何年のどこにいるのかしら?」
 さぁ状況を整理しましょう、とハーマイオニーは描かれていた紅茶を一口飲む。


 記憶が今戻ったことと、両親が分からない孤児であること。そしてハロルド=ポーターという名前になったことを告げる。あの名前そのまま使うことになったんだ、と笑うロンに紛らわしい名前だ、とドラコがため息を吐く。間違いなく5歳の時……1985年なんだね、と再確認するネビルに状況はそれほど悪くはないわね、とハーマイオニーがやれやれという風に息を吐いた。

「ハリー。貴方は……大分無茶苦茶な提案をしていたけれども、まさかそれを実行する気?」
 私たちは見ての通り絵具と記憶だからサポートしかできない、と魔法大臣の時の時と変わらない、少し険しい顔をしてハリーを見る。他の3人もじっとハリーの言葉を待つように見つめ……結末であるヴォルデモートの死以外を変える方法か、と各々腕を組んだり、テーブルを見つめたりしつつうなりを上げた。

「この世界と元の世界、繋がっていると思うかい?」
 かつて一つの命を助けようとして、未来をめちゃくちゃにしたお騒がせコンビを頭に浮かべるハリーはわかっていると頷いた後、4人の賢人に問いかける。

「あの箱については……かつて説明した通りだ。ただ……この世界には君が、ハロルドがいる。かつての世界にはいない。ということはあの箱が作り出した世界なのか、あるいは……父上の遺した記録にあった……並行世界というものになるのか」

 当主を継がせた時にスコーピウスが手つかずだった闇の道具を整理し始め、手伝ったアルバスと共にみつけた逆タイムカプセル。説明を見て、ちょうど親たちがもしもの話をしていたことを思い出した二人が、計画とかあるならこれにまとめて保管しておけばいいじゃないか、という発想で渡されたトランク。

「あートランクについていた製作者の名前、確かにそんな研究をしていた魔法使いだったわね」
 ハーマイオニーもまた調べていたらしく、そういえばそんな研究をしていたわ、と同意する。へーと全く分かっていない風の3人に大きくため息をつき、ハリーと声をあげた。

「マグルの作る物語とか……学校でも読んだことないのね。そう……。マグルの物語などでもたびたび出てくる、似た別の世界のことよ。元の世界をそうね……虹の赤い線だとして、今ハリーの居る世界が黄色ということ。並行しているし、同じ光だけど交わらないものよ」

 まったく同じだけれども違うもの、というハーマイオニーにロンとハリーそしてネビルの反応はやや悪い。本当に闇払いの局長と薬草学の教授か?というドラコにロンが僕は?と声を上げた。さっくり無視するドラコにロンが抗議の声を上げるも、ドラコはまったく聞くそぶりはなく、それで、という。

「とりあえず元の世界に何もないのであれば……あの作戦で行こうと思う」
 ほとんど僕の演技力とかにかかっているっていうのが怖いけどさ、と笑うハリーに4人はそれぞれ心配げな顔を覗かせ、わかった、と頷いた。

「私たちは絵具と記憶にすぎない。だから、あなたが決めたことを応援する以外できないわ」
「そのかわり、私たちの知恵や記憶をかそう。息子の責任でもあるしな」
「僕もできる範囲にはなるけど、協力する」
「みんなが先にそれ言うと僕の入れるところが!!ハリー、僕はこいつみたいに闇の記憶も、ハーマイオニーみたいな知恵も、ネビルみたいな知識もないけど、それでも僕は君の親友だ。悩みとかいつだって言ってくれ」

 4人がじっとみつめ、ハリーはありがとう、という言葉しか出ない。ありがとう。こんな自分にみんながついて来てくれて。

「それじゃあ最初に……そうね、あの時って周囲には……」
「猫のブリーダーをしているスクイブのおばさんだけだ。後は意図的に遠ざけていたみたいだから」
 まず最初におこなうこと、というハーマイオニーにハリーは見張りはいないはずだ、と魔法省に勤めているときや騎士団員の生き残りとの会話でそう聞いた。幸い、魔法は問題なく使える。