Se●しないと部屋

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 一体なにがどうして、とネオン街にしか見ないようなピンク色に光る看板を見上げ、ハリーは呆然と立ち尽くしていた。書いてある文字を何度読んでも頭に入ってこない。一体どうして何があった。その言葉だけが頭に響き渡る。

 ことの始まりは死喰い人だ。ホグズミードで買い物をしているとぞくりとした悪寒が走り、空にディメンターが数体いるのが見えた。ホグワーツに戻るための道に生徒が殺到し、あちらこちらで守護霊が飛び出し……。ハリーもその一団と共に逃げようとした。
 だが、現れた黒衣の男たちがまるで誰かを……自分を探す様に逃げ惑う生徒らを見ていることに気が付き、慌てて真反対へと走るしかできなかった。ホグズミードの外は殺風景なまでの山岳的な地形で、今はどこかに身を隠すべきだ、とハリーは遠くに見える廃墟を目指し走っていく。

 きっと、きっといろいろな守護の魔法がかかった範囲から出たのだろう。駆けつけた騎士団らと交戦する音を後ろにとにかく走り……古い家へと飛び込んだ。
 姿が見えない自分にきっとハーマイオニーやロンがすぐに報告し、助けが来るはずだ、と息を吐き、家の中をゆっくりと確認する。ぼろぼろの家はずいぶんと昔に放置されたらしく、奥の扉はどうやってもあかない。
 
 最悪一晩ここで過ごさなければならないかもしれない、とため息をつき……靴音ではない何かの音を耳が拾い、ハッと息をひそめ、杖を握り締めてしゃがみ込む。

 音はまるでハリーがここにいるのを知っているかのようにぐるりと周囲をめぐり……ぱたりと途絶えた。どこかに消えたのか、そう思い隠れていた壊れたクローゼットの影から顔を覗かせ……赤い閃光に慌てて顔を引っ込めた。

「よもやこのようなところに隠れていたとは。埃まみれで逃げる姿は実に無様だな」
 少し高いような冷たい声に、誰の声などと考えるまでもなかった。こんなところでもっとも会いたくない最悪の相手、ヴォルデモート卿が杖を手にそこにいた。杖は役に立たないかもしれない、そう思って次の魔法をかわし……無我夢中で目の前にあった扉にかじりつき、何も考えず扉を開けて飛び込み……。そして今に至る。


 思い返せば無我夢中で飛びついた扉は、最初に廃墟を確認した際に開かなかった寝室への扉だ。それはこの際、ヴォルデモート卿の魔法が開いて扉が緩んだか、あるいは無我夢中のバカ力で扉を無理に開けたのか。そんなことはもうどうでもいい。魔法をよけて転がり込むように中に入り、ヴォルデモート卿が追い詰めたと鼻腔を膨らませて追ってきた。その瞬間この奇妙な部屋に閉じ込められたのだ。

 ハリーにとって閉じ込められたのは、死喰い人らが駆けつけることを考えれば、まぁ良いだろう。最大の問題は一緒に閉じ込められたのが……そう考えてハリーはちらりとヴォルデモート卿を横目で見た。

 部屋はあの廃墟とは全く異なる様相だった。シャワー室とトイレが併設されている寝室ではあるが、深緑色の壁紙は傷一つなくまだ新しい。群青色をしたカーペットなんてまだ、ふかりとした毛を靴底で感じられるほどだ。ヴォルデモート卿の少しとがったような爪と骨ばった足がその毛に半ば埋もれているのだから間違いではない。
 そしてハリーとヴォルデモートの間に鎮座するのは白いシーツが馬鹿みたいにピシッとしているクイーンサイズのベッドだ。糊の効いたシーツはきっと指を乗せたらすぐに皺が寄り、勢い良く腰を下せば弾むほどスプリングスが効いてこちらを上下に跳ねさせるだろう、というのが容易に想像できる寝台はでん、と鎮座している。

 そしてもう一度ハリーはあのけばけばしいネオンの文字を見上げた。この部屋には扉がない。入ってきたはずの扉の代わりにあるのがその看板だ。


 ひときわ大きくぴかぴかと輝く文字に唖然とし、その下に書かれた文字に更に愕然とする。

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・この部屋では浮遊呪文・拘束呪文以外を封ずる
・強姦はノーカウントとする
・性交補助用の備品は好きなだけ使用可能
・仮に片方が死んだ場合永久に扉は開かれない
・暴力反対
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 殺される可能性がぐっと減った事になんだかほっとしつつも、扉が開くための条件が条件だ。いっそ強姦可能であればまだ……まだ一方的に襲われたとして、蛇に噛まれたとでも思えばいい。むしろこの状況においてそれ以外が成り立つのか、それが甚だ疑問ではある。

 もう一度ヴォルデモート卿を見れば、呪いなどの魔法は試したらしく、頭痛を抑えるように少しとがった爪の指で顔を覆っている。どれだけ憎く、嫌いであっても一応はホグワーツきっての秀才だった男だ。敵の血としもべの肉と父の骨で、残骸のような魂の破片のような、そんな有様から復活するすべを考え付くほどの秀才だ。それがここまで頭をかかる事態はいよいよまずい状況ではないのか。

 ぎこちなく周囲を探ればハリーのちょうど真後ろにサイドチェストがあった。そこに並べられているのは軟膏のような半透明のものだ。まさか愛の妙薬では、と眉を寄せ……ヒュン、という音に体が反応するより先に手足が細い紐で拘束され、ハリーはバランスを崩してその場にしりもちをついた。


「なるほど、インカーセラスは使用可能であると」
 探る様な声に顔を上げれば、ようやく動き出したらしいヴォルデモートが杖をハリーに向けて立っていた。書いてあるから知っていた、と思うハリーだが無理やりは認めないと書いてあるのになんでこれは可能なのか、と部屋の注意事項を作ったであろう誰かに怒りがわく。

「あの廃墟に逃げ込んだのはよもやこのような仕掛けがあると、そう知ってのことか」
「冗談じゃない。灼熱の太陽から逃げるためであっても、こんな仕掛けがあると知っていたらこんなところに逃げ込んだりはしなかった」
 寝台を回り込み、冷たい目で見降ろすヴォルデモートは心底うんざりした顔でハリーに問いかけ……とんだ誤解だとハリーが言いかえす。
 
 ホグズミードで起きた戦闘から逃れるため、ホグワーツに向かう道が封鎖されていたために、やむおえず逃げ込んだ廃墟。こんなことなら以前シリウスが使っていた洞窟にでも逃げればよかった、とハリーは縛られたままヴォルデモートを見上げた。
 額の傷は今は痛みを発していない。きっと、母の愛による魔法も今この部屋では抑えられているのだろう。いや、そもそもこの廃墟自体がおかしかったのかもしれない。あれだけヴォルデモートがそばにいたというのに痛みを感じなかったのだから、きっとそうだ。

 復活したときにこの男は自分に触れることができるようになっていたのだから、クィレルのように死ぬこともないだろう。とりあえずハリーを残して目の前の男が死ぬことはたぶんきっとないはず、という事で永久に開かれないリスクはないはずだ。
 
「ホグワーツ周辺にはマーリンの遺した悪戯のようなものが数多くあると聞く。突然現れる迷宮やおかしな洞窟も……。長年放置され続けたこの廃墟がおかしな力を得たとしてもあり得ない話ではない……そういうことか」
 ハリーを床に転がしたまま思案するヴォルデモート卿は改めて周囲を確認し……ハリーが見つけたサイドチェストの備品に目を止めた。

「なるほど。このような戯言に時間を浪費するのもバカバカしい限りだ」
 杖を振るとハリーの体は宙を浮き、寝台のど真ん中に落とされる。いやいやまさか本当にやる気じゃないだろうな、と跳ね起きたハリーは逃げようとして足を掴まれる。靴を放り投げられ、なぜか靴下も脱がされ、必死にもがくのもずるりとボトムスが縛られた足首まで降ろされる。

 あっというまの手腕に羞恥心で顔を赤くするハリーが、思ず動きを止めると今度は上着が脱がされ、着ていたシャツがまくり上げられる。この手慣れた感何、とあっという間に半裸にされたハリーはまるで洗われる犬の様に呆然とした風に思考が止まる。

 足を縛っていた紐が消え、急いで逃げようとするその力を逆に使われてボトムスが脱げ、下着に手を掛けられるのを必死に抵抗した。じたばたと暴れる足に舌打ちをするヴォルデモートは再び杖を振ると両足から伸びた紐が寝台の足に絡みつき、大きく足を開いた状態で固定される。

 これほぼ強姦じゃないか、と焦るハリーだがノーカウントなだけで許されないことではない、と急に気が付き怒りなのか、それとも恐怖か、あるいは羞恥か。様々な感情が入り乱れながらわなわなと震える。

 というかなぜ当然のように自分だけが脱がされているのか。男同士だけでなく、そもそも男女であっても性に対しての知識がないハリーだが、何かおかしいとヴォルデモートを睨みつけた。無言呪文というのがあるのだか、視線で攻撃することはできないのか、と封じられていることもすっかり忘れてヴォルデモートを睨みつける。

 無言でいやにてきぱきとハリーの手を封じながらも、縛る場所を変えるなどして服を抜き取ったヴォルデモートは下着1つのハリーを見降ろした。まるで下処理を終えた魚を見下ろすような、そんな目に絶対嫌だ、と身をよじる。

「なに、心配せずとも扉があき次第、すぐに命を奪ってやろう。人生最後の享楽だと、そう諦めて楽しめばいい」
 どうせすぐ殺す、というヴォルデモートにハリーは青ざめる。なぜ拘束魔法が可能なんだ、と思ず震えそうになりながらヴォルデモートをにらみつけ……内心でどうしてそれを思いつかなかったんだ、と焦るしかない。このままことを行い、無事開いたとして拘束されたままであれば抵抗する間もなく、解禁された魔法であっという間にジ・エンドだ。

 だからと言って女の子ともそんなことになったことはなく、ましてやキスだってまだなのに憎んでいる宿敵と性行為をするだなんて到底受け入れられるものではない。いや、そもそも何をどうするかわからないが、少なくとも男の性器を女性の性器にどうにかすることぐらいはわかる。あいにく、プライマリースクールではそこまでの授業は行わない。行うのはセカンダリースクールからだ。

 男同士ならばどうするのか。男性器を……男性器をどうするのか。ハンサムな青年トム=リドルならば女性相手に苦労したことはなさそうな気がする。そう、きっとちょっと声を掛ければ引く手あまただったのではないか。きっとその応用で男性同士もわかるのだろうが……いやもしかしたら実はそっちが本命で……。

「何を考えているか、わざわざ開心術を掛ける間もなくわかることだが、くだらないことを考えているほど余裕ということか」
 ぐるぐるとする思考がヴォルデモートの声でぴたりと止まり、縛られているハリーは全く乱れた様子のないあの黒いひらひらとしたローブを着たヴォルデモートを見上げる。腕はひとまとめにされた状態で寝台のヘッドボードにつながれているため、寝台に文字通り縫い付けられた状態だ。そして隣には自由に動ける闇の帝王。

 愕然とするハリーはヴォルデモートが自身の手に何かを乗せているのに気が付き、どうにか打開策はないかと視線を移す。手に持っているのはジェルのようなものだ。あの備品の一つかな、と現実逃避するハリーだが、ヴォルデモートの手のひらから落とされたそれの冷たさに身をすくませ、胸元でプルプルと震えるそれを見る。

 これは何、と考えるもヴォルデモートの指がジェル事ハリーの胸の飾りをつまみ、くるくると円を描く。は?と意味が分からないハリーだが、鋭利にも見える伸びた爪がその飾りをこそぐようにかりかりとひっかくときゅっと内股に力がこもる。
 くるくると動く指の下、先ほどよりもなにか異物感がしてじっと見つめれば胸の飾りがぴんと、乳首が立っているのが見え、意味がわかず目をしばたたかせた。ヴォルデモートの指がぐっと押し込めるとそれは胸に沈み、指が離れるとぷん、とそれは立ち上がる。

 乳首ってこんなことになるんだ、とどこか他人事のハリーだが、きゅっとつままれたことにビクリと体を揺らし、熱が下肢に集まるのを感じる。こちらの方が強そうだ、という呟きと共に今度は直に胸に何かが垂らされ、その冷たさにまた腰が重だるくなる。

「ひゃっ!!!」
 先ほどと同じようにこねられつままれると、ぞくぞくとしたものが体を駆け巡り、もじもじと膝を合わせようと必死に足を揺らす。ヴォルデモートはまるでおもちゃを見つけた子供の様に、どこか興奮した様子で熱心にハリーの乳首を弄りだす。
 片方を引っ張り、片方をつまんで離してを繰り返し……どちらがより乳首を大きくしたのかを確認するように手を止める。そしてまたそれを繰り返し、どこまで大きくなるかを確認しているようだった。

 偽のムーディがかけた服従呪文のようなふわふわとした陶酔感に、気が付けばハリーは言葉にならない喘ぎを零すのみで、胸の刺激以外が頭から消える。





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