夢の中で・・・

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 月の明かりのみが支配する世界…。
そこに設けられた寝台からは淫らな音が聞こえ、二人分の不規則な息づかいが絶え間なく聞こえる。
【やぁ…ん…。あぁっ】
白いシーツの上でゆれる小さな身体。そしてその上に覆いかぶさるようにいる長身の姿。
【くっ…ハリー…愛し…。】
低く、それでいてどこか熱を帯びた声が響き…。
 
「うわぁぁぁあああ!!!」
休日の朝…。
グリフィンドールの一室で大声を発しながら起きた少年。その声に驚いて目が覚めた少年達の声とベッドから落ちる振動が響く。
「なっどうしたんだよハリー!」
「ハリー…。頼むからいきなり叫ぶなよ。」
「悪夢でも見たの?」
「顔真っ赤だよ?どうしたの?」
「ごっゴメン…大丈夫…。ちょっと悪夢見ただけだから。」
 ハリーが謝ると何事かと扉に集まっていた、他学年の人達はそれぞれの部屋へと戻っていった。
ルームメイトである面々もぶつぶつと文句をこぼしながら2度寝しようと横になる。
「ハリー。大丈夫?もしかして傷が痛んだとか?」
「うっ…うぅん。違っ…え~っとスネイプに箒から落とされる夢を見たんだよ…。」
「あ~~。ありそうな夢だからそりゃ怖いな。」
 とっさに付いた嘘の夢にロンは納得したように頷いた。
本当のことなんていえるはずもない。確かに傷はかなり痛い。
此処最近見る夢と同じような感覚だ。
だが…。この夢ばかりはどう説明をしたらいいのか分からない。
ダンブルドアに報告したほうがいいか…。
そう考えるもすぐに首を振る。なんと説明をすればいいのだ。夢の中であいつに…
そこまで思い出し、さぁっと血の気が引くようであったがこればかりは誰にも言う事ができないとハリーはため息をついた。
 まぁあいつの意識の中に入ったところで同じことは何度も起きない…はずだと思い、極力そのことを思い出さないようその休日を過ごした。


一週間後。
「ハリー…。大丈夫?すごい隈よ。」
 ハーマイオニーが心配するのは無理もない。
あの夢を見て以来、ハリーは満足に寝ることが出来なくなってしまったのだ。
「うん…。最近眠れなくて…。」
「それならちゃんとマダム・ポンフリーに言って睡眠薬をもらった方がいいわ。」
「それとも…例のあの人?それだったらダンブルドア先生に…。」
 友人達の心配そうな声にハリーは曖昧に笑ってごまかして見せた。

いえるはずがない。
あの夢を見て以来、夜中になると抑え様のない感情が膨らみ、興奮してなかなか寝付くことが出来ないのだ。
それに寝たところで数分後にはあの夢を見始め、3時間もすれば目が覚めてしまい、自分の身体の異変に気付いてはそっとトイレに駆け込んでいるのだ。
おかげで今では家事呪文の一つ、服をきれいにする魔法を完璧に近い形でマスターしている。
しかも…夢を見始めて4日後にはあの夢を見ると言いようのない甘い感情がわきあがり、夢の中身にも深く影響を及ぼしている。
はじめの夢は紛れもなくあいつの精神に繋がっていたのだが今では自分の夢なのか奴の感情なのか全く区別付かないほどとなっていた。
「それにしても…。あの夢って…あいつの夢?」
 ぶつぶつと独り言をつぶやくハリーをロンたちは心配そうに見つめていたが、何せハリーの傷の問題である。
口出ししようにも本人が違うといっている限り何も言う事ができない。





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