盗聴はダメ
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最近、ポッターの様子がおかしい。
地下牢に続く階段ではしょっちゅう楽しげに笑っている。
スリザリン寮監スネイプ先生の、奴にとっては辛い、僕にとっては爽快な授業があるというのに…。
2ヶ月くらい前から様子がおかしいかった。
「マルフォイ、君はもう魔法薬学のレポート出した?」
クラッブの低音が聞こえ、はっと我に返った。
「あぁ。もちろんだと…あれ?」
昨日出したはずだ。なのに…なぜ鞄の中に?
「しまった!まだ提出していない。クラッブ、ゴイル。二人とも書き終えているか?」
僕の問いになかなか反応をしめさない…一呼吸開いてから返事なんて…なんて鈍いんだ。
「明日出すよ。」
手元見ればわかる質問だったみたいだな…。二巻き分の羊皮紙が3行しか書かれていない。
しかし…このレポートは冬休み前に出た課題だ。
つまり冬休み4日目の今日には終わっていてもいい課題。
それがたったの3行…。
まぁいいか。
この機会にスネイプ先生に渡した例の物で中の様子をうかがってみるか。
「じゃあ僕は出してくる。」
談話室を出て、地下牢を歩く。
今はまだ生徒の出入りが許されるぎりぎりの時間。
なぜこんなにも夕食後の時間が短いんだ。
もっとも、先生の罰則や用事、手伝いなどでは多少遅れても大丈夫だ。
ポッターはしょっちゅう罰則を受けているから時間なんて守れていないだろう。
スネイプ先生には申し訳ないけど罰則を受けている時のポッターの様子を聞くためにプレゼントした特性羽ペン。
僕のもっているこのイヤホンとやらで盗聴…きくことができる。
この冬休み中、ポッターは罰則を受けていたはずだ。
流石にこの時間は…いないと思うけど、スネイプ先生が今忙しくないか、いらっしゃるかどうか聞くのに使えるだろう。
杖でボタンのような物を軽く叩き、耳にはめる。
元はマグルの製品だというが、役に立つのなら何でもいいだろう。
奥の部屋にいるのなら扉の前にこないと聞こえないほど弱いものだけど…。
「…だ…っ…い…。」
そろそろ聞こえ始めてきたか…。
けどこれはスネイプ先生の声とは違うような。
扉のすぐ側でこのくらいという事は奥の部屋に?
普通に考えて奥は寝室。寝室で他の人間の声…いやいやまさか。
そんなここは学校なんだし…聞き間違いだろう。
「せ…い…た…んぁ…」
はっきりともう一人別の声が聞こえ、思わずかたまってしまった…。
声だけでは全然わからない。
けれどこう…普通の声じゃなかったような…そんな気がする。
勇気を出してもう一歩前に進む。
扉はもう目の前に迫りつつある。
「先生…そんなに激しくやられると…。」
「用事でもあったのか?」
「明日ホグズミードでクリスマスのプレゼントを…。あ…ふ…」
「ほう、奇遇だな。私も行こうと思っていたところだ。」
あのスネイプ先生が私!?まさか聞き間違えじゃあないだろうな…。
第一に先生って…相手は生徒!?他の寮生間では嫌われていると噂が合ったのに…。
一体誰だ?
「ほっ本当?」
「あぁ。いくか?ただしダイアゴン横町に一泊したほうがいいかもな。他の生徒に見られる。」
一泊…。ふっ、僕もまだまだ子供だな。すこし刺激が強いようだ。
いやまぁこの状況で今まさにの状況で…。
「先生と僕は公に出来ないもんね。」
ぼっぼっぼっぼっ僕!?あのスネイプ先生が…男子生徒と…。
あっ頭が痛い。
「…会話は後にするか?もうお前のここは震えているぞ?」
「だって…先生の…中で熱いんだもん…。」
「じゃあ動くぞ。」
…もしかしてかなりまずい時に来た?
思わず聞いていられなくなって耳から外したけど…。
イヤホンからは甲高いようなそんな声が聞こえる。
ん?誰か来る。
とっさに開いている教室に飛び込んだ。
どっかで聞いた事のあるような歩き方と言うか足音…。
よし。覗いてしまえ。
扉から廊下を窺うと…あれはマクゴナガル。
「スネイプ先生、マクゴナガルです。…そこにいる生徒の友人がここ数日その子を見ていないと心配になっておりましたよ!!!いくら校長が許したとしても…。まだ生徒が廊下にいるかもしれない時間にその…やめていただきましょう!!」
ダンブルドア公認…。
しかもマクゴナガルという事は相手の生徒はマグル贔屓が多いグリフィンドール生。
よりによってあいつ等の内の誰かなのか!!
ごそごそという音がイヤホンから聞こえ、がちゃりと扉が開く。
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