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もしも…ヴォルデモートが改心したら…

「元闇の帝王、再就職」




6月半ば、復活した闇の帝王の脅威は消え去った。
が…当本人が死んだというわけではなく、改心したというのだから魔法界の人々は騒然となった。
一部の全く信用されていない噂によると、改心させたのは帝王の恋人だという。


新学期
「今年の闇の魔術に対する防衛術って…もういらないんじゃないのかな?」
 ホグワーツ特急に乗ったいつもの3人組は今年の授業について話をしていた。
「何言ってるのよロン。魔法生物の中には危険なものもいるのよ。それに対抗する術を学ばなきゃ。ハリー。あなた今朝からずっと溜息ばかり…どうしたの?」
 呪いの呪文が消えたわけじゃないんだから、というハーマイオニーにロンはめんどくさいとため息を吐いた。
 ハーマイオニーは斜め向かいに座るハリーを覗き込むと首をかしげた。
 出発前からずっとこの調子だ。

「なんでもないよ。ハーマイオニー。」
 はぁっと窓の外を眺めながら再び溜息をつく。
「もしかして…例のあの人のこと?それとも例の人?」
 ハーマイオニーが言うと、ハリーはギクリと身を固める。
「え!?えぇっと…うん、そう。例のあの人のことだよ。最近じゃあ新聞にも載ってないから。」
「何言ってるのよ。ハリー。あなた恋人でしょ!まさか…あれから連絡取ってないの?」
 途端に、ハリーの目の前に座っているロンの手から百味ビーンズが転がり落ちる。
ため息をつくハリーはそんなロンにも気がつかず、そう、と頷く。
「そうなんだよ…全然連絡が取れなくって…え!知っていたの?ハーマイオニー!!」
「何をいまさら。当たり前じゃない。まぁ仕方ないわよ。悪行の限りを尽くしていたんだし…しばらくは連絡なんてできるわけないじゃないの。」
 目をしばたかせるハリーにしょうがないじゃないの、とハーマイオニーは頭を振った。
「わかってるけど…心配で。吸魂鬼も気になるし…」
 
 
 ロンは二人の会話が全く聞こえていないように固まったまま、石化している。
「ロンしっかりしなさいよ!」
 百身ビーンズを食べようと口を開けたままのロンを何しているのよ、とハーマイオニーがはたくとはっとしたように我に返ったロンは曖昧な笑みをつくった。
「あ〜〜えっと…苦労も多いだろうけど…がっがんばってね。ぼっ僕も応援しているからさ。」
「ありがとう!ロン。あれ?」
 何が何だかついていけないと、ロンはとにかく友人を祝福?するとハリーは嬉しそうに頷く。
 
 ふと、耳を済ませると何処からともなく何かが這うような音がし、3人は黙り込む。
「でもここって最後尾だよ。」
 大体車内だし…っと立ち直ったロンはなぞの音に耳を済ませた。
「なんかどっかで聞いたことのあるような音なんだよ…。開けるよ。」
 通路の外に顔を出せば何かわかるのではと、ハリーは座ったまま身を乗り出し、戸に手をかけようとした…。
 
  
 【ガラッ!】
 
「うわわわっ!!」
 突然開いた戸にハリーはそのまま空をつかみ、バランスを崩してしまった。
とっさに伸びてきた腕に抱きとめられ、その覚えのある感触にハリーは顔を上げた。
「ヴォル!!」
「ハリー!?」
「何でここに!?」
「なぜ最後尾に…」
 どうやらヴォルデモートは最後尾の誰もいない席に座ろうとやってきたらしい。
どうして学校に向かう列車に乗っているのか、驚いて見つめ合う以外思考が追い付かない。

 がたっという音にハリーは振り向くとバランスを崩したハリーに驚いて腰を浮かした親友の姿。
 音は膝の上に乗せていた百味ビーンズの箱が転がった音だったらしい。
「ロン、ハーマイオニー…だっ大丈夫?」
「あぁ、話していた二人か。」
 声をかけるハリーと一緒にいるのが誰かを確認したヴォルデモートが口を開く。

「「わ〜〜〜〜!!!!!!」」
「っ!!!」





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