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An happy Dolle
腕に触れた何かに気が付いたスネイプは徐々に目を覚まして、傍らに眠るドールを視界に入れる。通常のドールと異なり、一度機能を停止した彼は所有者であるスネイプの“命令”には従うものの、そうでないものに関しては彼の気分次第で解釈を変えるようになった。
ドールとしては壊れているのだろうが、生憎彼はドールとして生み出されたわけではなく、もともとが人間だ。これが彼本来の性格なのだろう、といつの間にか寝室に潜り込み寝ているハリーの髪をそっと撫でつける。
それで目が覚めたのか、ピクリと身震いして翡翠の様な、美しい光沢の瞳を覗かせる。多少美化されていると本人がいうが、色は元の色じゃろう、と彼の両親を知るダンブルドアは微笑み、スネイプに復職の話を持ってきた。
ハリーについては魔法省と協議中とのことだが、もし破棄しろと言われたのならばどこまでも一緒に逃げればいい。その考えを見透かしたダンブルドアが魔法省に学校で管理すればいいじゃろうと言っていたのを聞いている。
ドールはあまり手荒な環境は好まない、と説明書にも書いてあった。できれば苦労をかけたくないスネイプはまだ寝ぼけた様子のハリーに小さく笑い、口づける。強がりで、意地っ張りで。命に係わる事でもこれが最善と思えば我慢してしまう。そんな危うさにいつしか魅かれていたスネイプはハリーを抱き上げ、驚いて目を覚ましたハリーを下から見上げる。
スネイプに乗り上げる形になったハリーはドールだから極端な赤面はないものの、見るからに顔を赤らめてじっとスネイプを見降ろしていた。彼の重みを感じたくて乗せたスネイプはその体勢にはたと気が付き、慌てて体を起こす。
「いやな記憶を思い出させたな。すまない」
「いっいえ…その…。いやじゃないんです。僕の用途は知ってますよね。ペットのようにかわいがる、普通のドールとは違うってことを。一応あの製作者も道具を使っての試運転だったから未使用ですし…穢いとかそういうわけじゃないですけど」
体を起こしたことで、倒れないようにとっさにスネイプの肩に手を置いたハリーは目をそらし、そわそわそと落ち着かない様子で顔をそらす。
彼がドールになった経緯を想えばよくないことだ、と考えるスネイプも落ち着かない。自分でもわけがわからない、というハリーは縋りつくようにスネイプに抱きつき…顔を赤らめたハリーはガバリと起き上がるとミルク飲んできます、と身をひるがえして走って行った。
普通の人間のようには走れないハリーだが、体を起こしただけのスネイプは寝台から足をおろして、深々とため息をつく。あれから文献をあさりわかったのは目覚める条件はドールによって異なるそうだが、総じてその対象に恋をしていることが多いという。
< ハリーの様な男性タイプは少なく、女性タイプが多かったというドールは同性であっても自らが愛情を抱く相手を選んでいる、そう書かれており、人間のひとめぼれの様なものとも書かれていた。
ここで問題なのは自分の気持ちか、と考えるスネイプは嫌なわけではないことに小さくため息をついた。再起動してからはよく笑う様になり、自らキスをねだることもある。スネイプ自身、他の陶器の様な硬さではない不思議と柔らかな唇に触れたくなって、突然引き寄せてお互いが満足するまで口づけることもある。
それだけでも構わないと思うスネイプだが、ハリーはそうではない。一定期間愛を与えていなかったこともあり、もっと明確な愛を欲していた。それが彼のトラウマにつながっていることはハリーも承知だろう。
それでも、一目ぼれした相手であるスネイプを求めている。ハリーがそうといったわけではないが、求める様な目と勝手に寝台に潜り込むのが物語っていた。今頃なんてことを言ったんだ、と一人自己嫌悪に陥りながらミントをむしっているだろう。自分の大切な食事のはずが、彼はどうにも無頓着なようで、自分で作ったミルクは味わうことすらしない。所有者であるスネイプが作ったミルクは極上の甘露を舐める様にじっくり味わいながら飲むのだから、ドールの習性は興味深いとしか言えない。
書庫で探し物をしていたスネイプはそろそろ昼食をとるか、と立ち上がってうわっという声とともに何かが倒れる音を聞く。慌ててキッチンに向かえばちょうど角砂糖を摂取するタイミングだったのか、戸棚からとりだそうとしてバランスをくずしカップをひっくり返したらしい。
頭にカップを乗せるという器用な格好で座り込むハリーはびっくりしたのか固まっていた。最悪、とやっと動き出したハリーはよほどお腹が減っていたのか手についた雫をぺろぺろと舐め始める。少し溶けた角砂糖と指ごと口に入れる姿にスネイプの何かが揺れ動く。
気が付けばきょとんとした表情でハリーは床に組み伏せられており何が起きたかわからないままにぺろりと舐めあげられた頬に顔を赤らめる。魔法でキレイにすれば早いが、そういうことではないと、こめかみを流れるミルクをなめとり、そのまま小さな耳に舌を伸ばす。
「んっ!や…そこ…ぺろぺろ…ぁっ、そこには入って、ぁあ!」
ぴくぴくと体を震わせるハリーは声を抑えようと口に手を当てる。だが、奏でられる声はハリーの手では抑えきれず、次々と細い指から零れ落ちた。
怪我をしていないかの確認だ、と自分に言い聞かせ濡れた服を脱がせる。甘いミルクの香りをまとうハリーは抵抗せず喉を食む様に、被ったミルクをなめとるスネイプの動きに体を震わせる。
ぴくっと何かが震えた気がしてハリーは膝をすり合わせた。熱くてたまらず、震えるとスネイプはハリーの胸元に口を寄せる。まるで何かのスイッチの様にフルフルと立ち上がった飾りに口角を上げ、ぐにぐにと淡い果実をもてあそぶ。
背をそらすハリーは喘ぎ声をあげてだめっというが全く力は篭っていない。胸を弄る手はそのままに、滑らかな肌を堪能するように唇を滑らせ、窪んだだけの臍を舐める。
ぴくんと震える体を抑えて下っていけばドールには必要ないと思えたものが、透明な液をまとい立ち上がっていた。唇と同じように不思議な弾力のあるそれは甘く、とめどなくあふれる液はさらさらとしている。独特の青臭いにおいがないそれは彼がドールであることを物語っていたが、スネイプは気にせず舌先だけで液をなめとる様に動かした。
びくんと震えるハリーは両手をどうしたらいいのかわからず彷徨わせ、着ていたシャツを掴み、口で銜える。喘ぐ声がくぐもってしまったが、どこか縋るものが欲しかったのだろうと、口に含んだ少年のものを棒アイスの様に舐めて吸い出す。
「っあ!!だめ、でちゃ…ぁああ」
ダメと首を振るうハリーに構わず根元をくすぐれば蜂蜜の様なものがスネイプの口に満ちた。それをごくりと呑み込めばハリーは顔を赤らめてパクパクを口を開ける。恥ずかしがっているハリーに微笑み、口づけるとこちらからも甘い香りがしてスネイプはハリーを抱きしめてごろりと位置を変えた。
背中に感じる硬い床にここがどこかを思い出すスネイプだが、今は離れたくなくてハリーを抱えてドールには必要のない、つつましやかな蕾に手を伸ばした。
濡れた手でくるりと円を描けばひくひくと震えて口を開く。いくらドールだからと言って、彼のトラウマを呼び起こすような乱暴な真似はしたくない。深く口づけながら指を静めればまるで生き物の様に熱く、ぐねぐねと蠢く。
念のため、と指を増やしかき混ぜるスネイプはハリー自身が出した液に濡れた手を抜いた。確かめる様にハリーを見上げると、蕩けきった顔でスネイプをじっと見つめている。
掴んだ腰を自身の上に下ろすスネイプは人形とは思えない感触にぐっとこらえてすべてと呑み込ませる。びくんと震えて根元まで呑み込んだハリーは天井を見上げて動かない。ハリーの小柄な体にはきつかったか、と思うスネイプだが、スネイプのものをきつく締めあげるそこがやわやわと動き出したことに満足して、下から突き上げる。
「せ、せんせ…ぁんっふ…気持ち…あっ、そこ、ぁ」
突き上げるごとに声を出すハリーが心配げにスネイプを見つめてきた。本来のドールとは違う用途で生み出されたハリーの“初仕事”にスネイプは生まれた経緯を思い出して痛まし気に眉を寄せる。
それに不安になったのか、ダメでした?というハリーを引き倒して口づけ、腰を掴んで激しく揺さぶる。甲高く喘ぐハリーの奥にスネイプの奥で燻ぶって燃え盛った炎の一片を注ぎ込むと、もう何度目になるかわからない飛沫を上げてハリーは力なくスネイプに倒れこんだ。
はぁはぁと荒い息で落ち着こうとするハリーだが、入れたままのスネイプの物が徐々に硬さを取り戻していることに気が付いて、顔を赤らめる。
「これが答えだ」
すっかりもとに、いやさらに大きくなったものにハリーは部屋に、と呟く。それもそうだ、とスネイプはハリーを抱きしめると寝台へと一瞬で移動した。驚いた様子のハリーだが、あ、姿現し、と小さくつぶやく。
こんな短い距離に使うものでもないが、今はその移動すら煩わしいと深く口づける。そのままぐるりと反転し、今度はスネイプが覆いかぶさると、一瞬顔を強張らせるハリーだが、自分を抱くのがスネイプと認識して縋りつく。
口づけ、再び動き出すスネイプにハリーはそっと微笑む。ころりと転がったものに気が付いたのはスネイプだ。
喘ぎながら幸せそうに微笑むハリーの眼もとから生み出された雫が頬を転がって寝台に落ちる。箱で眠った、動かないハリーを思い出すスネイプだが、ハリーは艶やかに喘ぐ姿にこれが例の、とまだ宝石になっていない目元のしずくをなめとる。硬化する前であればただの液体なのか、舌先で消える感触に思わず、泣くなと髪を撫でた。
「なんか幸せがいっぱい、溢れて」
へへ、と笑うハリーにスネイプもまたほほ笑んで、お互いの熱が冷めるまで抱き合う。
早く彼を人に戻さねばな、と転がった貴重な宝石の山に苦笑し、そっと髪をかき上げる。所有者の、一目ぼれした相手の愛を受けた幸せなドールは彼の色を移した黒と緑の混じる宝石の中、静かに夢を見ていた。
-fin
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