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 ホグワーツの2年目が終わり、自宅であるプリペッド通りに戻ってきた生き残った男の子、ハリー=ポッターと、人生やり直し中の元闇の帝王ヴォル=セルパンは荷物を置いてやれやれと休憩していた。
 今年も今年でヴォルがかけた魔法なのか、バーノンは別の袋を階段下の物置に放り込み、トランクは取り上げられずに無事、部屋の中でその中身を開けていた。
 鉄格子も意味がないと分かったのかもう嵌められてはおらず、ヘドウィグとナギニは自由に出入りする。
幼いころに交わした約束を思い出し、ついに恋人同士になった二人は荷物を片付けながら……目が合うと今までの分を埋めるように軽く口づけを交わす。
 半年間石化したヴォルの体を悪用されないよう、ダンブルドアに預けていたハリーからしてみれば正しく“ヴォルが足りない”という状態で、眠って起きただけの状態のヴォルよりもスキンシップを取りたがっていた。ヴォルもまたそんなハリーがかわいくて……過去の自分の魂のせいで傷ついたハリーを癒したく、何度も角度を変えて口づけ、くしゃくしゃの髪を撫であげた。
 おかげで荷物の整理に時間がかかり、物音に誰か起きないよう、ヴォルはこの部屋に防音の呪文を唱えた。これで起きることはないだろうし、今後もこの中の音は聞こえない、と告げるヴォルは感心するハリーの耳が赤いことに気が付き、ぎくしゃくといや、そういうわけではあるけど今すぐじゃなくてともごもごと呟く。
視線を合わせ、どちらともなく重なる唇に二人そろって顔を赤く染め上げた。
あらかた荷物をいる物いらない物とに分け終わり、あくびをするハリーとともに例年通り寝台に横になる。夏でも何でも構わないと抱きしめあう二人はほどなくして互いを感じながら眠りに落ちていった。


 ダドリーはますます肥えて、バーノンの言いつけにため息をつきつつ草むしりをする二人を笑っていた。
 だが、ヴォルが伸びをするように立ち上がると、自分よりも背の高いヴォルに不満げな顔をのぞかせ、どこかに遊びに行く。
 ヴォルの身長はまた伸びて、もしかしたらスネイプほどあるんじゃないかと、ヴォルの肩ほどの自分の身長にため息がこぼれる。
 記憶が戻ったからなのか、それとも成長の過程でかつてリドルという青年だった時代があるせいかどこか色香をにおわすヴォルになんだか悔しい。
 ヴォルもまたかつてその美貌を主に悪事に使っていた自覚があるのか、ハリーに向けてにこりとほほ笑む。
 13歳の肉体ながらにも、中身が大人であるせいか大人びているヴォルに顔を赤くするハリーは慌てて草むしりを再開させた。

 もうすぐ13歳のハリーはやはり年相応で……でも半年間石化していたせいかどこか大人びた印象に、ヴォルはため息をついた。
 こんな純情で、顔に出やすくて……これほどまでに可愛くて愛しいハリーを誰にも見せたくないと独占したい気持ちが留まることを知らない。
 同時に日の光を浴び、風に癖っ毛を揺らすハリーは自由に大空で羽を広げていてほしいと願う。
 相反する気持ちがハリーに関することであるというだけで心地よく、ついかっこつけるわけでもなく素のほほえみを向けてしまう。
 赤くなった顔を隠すようにうつむくハリーの首が赤く染まっていて、おいしそうとごくりと喉が鳴る。
 かつてリドル時代に似たような、それでいて全く違う作った笑みに何人もの女子生徒だけでなく一部の大人さえも虜にしてきたが、いったいこの笑みに何の意味があることかといまだに理解できない。
 でもこの素の微笑は傍から見たらどれだけ緩み切って情けない、しまりのない顔かもしれないがハリーの首筋まで赤くさせる効果があると、その赤い首筋に口づけを落とした。
「ひゃっ!いっいきなり……」
「可愛い」
 びっくりしたのか、慌てて振り向くハリーの唇を奪い、何事もなかったように離れたところの草をむしる。
 ばかっ、というつぶやきを聞かなかったことにして……ハリーには見せられないにやにやした顔を隠したのであった。

 
 




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