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〜被害者の会〜




医務室で石化解除薬を投与し終わったスネイプは全員…それこそほとんど首なしニックまでもが元に戻ったことを確認し、扉を閉めた。
 ダンブルドアに渡した解除薬で今頃はあの問題児…いや問題爺か?も戻っているだろう。
それよりも先ほどダンブルドアにポッターの捜索をしなくていいと言われたのが気にはなる。もしかするとまた、また自分の知らないところで…また!危険な目にあっているのではないか。
その予感が頭から消えない。
いつになったらポッター家の、あのジェームズに助けられたという不名誉極まりない縁を断ち切ることができるのか。ただでさえあの石化した元帝王がその機会をことごとくつぶしているのだ。
せっかく今は石化してチャンスであったというのに…。


 確か今はマクゴナガルの部屋にいたはず、と足を向けるスネイプは、心なしかボロボロに見えるルシウスを視界に入れ…気が付かれる前にと踵を返す。


「セブルス。」
 がしっと掴まれた肩と、聞いたことのないほど力のこもってない声にすべてを悟る。
 とりあえずと地下へ移動し、自室に案内する。左腕を押さえている姿に空気が重くなり、痛みを軽減する魔法薬を棚から取り出す。
「セブルス、知っていたのか?」
「もうかれこれ2年近く見ているので。会ってしまいましたか。」
 魔法薬を飲み、一息つくルシウスの言葉にあぁ被害者が増えた、と一応教員なのでと頷く。去年あったトロールのことや悪霊の炎のこと…そして今期に入ってからのことを順立てて伝えると、ルシウスのため息がこぼれる。
 
 この調子だと…この騒動の原因はこの人なんじゃないのか、とうつむいた頭を見つめた。風のうわさでヴォルデモートから何かを渡されていたはずだ。
 何となく何があったのか、それを想像してしまい、自業自得ではと表情を変えないよう注意しながら悪態をつく。

「最悪だ…。しもべ妖精は解約させられたあげく、あの金庫の中身を処分するのにつてを貸せと…。ほかの理事らにも裏切られ、私の理事生命ももう終わりだ。」

 思わず頭を抱えるルシウスに金庫、と聞いてスネイプは記憶をたどる。
 
 一度だけルシウスとともに訪れたことのあるごちゃごちゃした金庫。
目についた闇のグッズをとにかく集めたのではと思うほどのひどさに呆れかえったが、まさかここにきてそれが再び出てくるとは思わなかったと、杖を振るい紅茶をいれる。
 それに手を付けるルシウスはようやくいつもの調子が戻ったのか、杖を使いボロボロになっていた髪や服の皺を直す。

 そのあとは息子の授業態度や成績などを聞き…問題児を思い出して再び沈み込む。
「セブルス、今度胃痛に聞く魔法薬をもらってもいいか。」
「念のため頭痛にも聞く魔法薬を…あぁストックがあるのでこれを。」
 振り回される予感しかしない、と嘆くルシウスに常備している魔法薬を渡す。
「スリザリンでなくて幸いだったなセブルス。」
「ことあるごとに引っ張り出されているので何とも言えないですが。」
 懐にしまうルシウスはそろそろ屋敷で休むとしようと立ち上がる。暖炉を使っていいかというルシウスにもちろんと頷き、やっと一人になれたと連日の魔法薬の生成で疲れた体をそのまま休めることとした。
 
 
 翌朝、大広間に行けばちょうどハグリッドが戻って来たのかハリーらと話し…セルパンが人目を気にすることなくハリーに顔を近づける。
 人の眼というものをまったく気にしていない元闇の帝王に頭痛がし、思わず頭をはたいた。
 来学期、とんでもなく嫌な予感がする、と先日発表された脱狼薬のレシピを手にしたダンブルドアの姿に思わず天を仰ぐ。どうして厄介ごとしか彼は持ってこないのか…。

 スネイプは常備薬のストックをさらに増やそうと大きくため息を吐いた。



 
〜被害者の会おわり〜




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