5:未来の世界
毎朝手紙が来ていないかの確認で孤児院に戻るリドルだったが、ようやく学校の手紙が来た、とハリーにとって懐かしい、学校の手紙をもって戻ってくる。それを見てからハリーはフクロウを飛ばし、すぐに戻ってきた返答に一人頷いた。
「これくらいなら揃いそうだね。明日、同じ闇払いのロン、っていう僕の親友が門の前に来てくれるから、一緒に買ってきなよ。それとあー……君によく似た名前がちょっといろいろあってね、リックという名前でみんなに報告しているんだ」
僕はどうやら出られないみたいだから、と残念がるハリーにリドルはわかったと素直に頷く。早くも未来の街を見ることができそうだ、とここ数日で立てた計画を実行すべきだと口角を上げた。
夏休みも半ば。ハリーはリドルを見てでかくなったなぁとため息をついた。ここで健康的な生活を送ったおかげか、リドルは遅れを取り戻すかのように急に大きくなった。まだ12歳らしい顔立ちだが、美少年というオーラは増すばかりだ。
「お金はとりあえずこれを使って。制服と本と……雑貨類と魔法薬の材料と」
足りるはず、とガリオンとシックルが入った袋を渡す。手持ちがあってよかった、とハリーはほっと胸をなでおろした。たまたま……金庫経由ではなく現金で買いたいものがあったために余分に出していたのだが、まさかここに軟禁状態になってしまうとは夢にも思わなかった。
「ロンにも言ってあるけど、あまり未来の情報は得られないと思って欲しい」
あそこはほとんど変わらないから大丈夫だとは思うけど、というハリーにリドルはわかっていると再び頷く。
そして翌日。前日にハリーが梟を飛ばしていた際に時間を指定したらしく、リドルが門の向こうに行くと赤毛の青年が立っていた。
「わっ、本当に出てきた。僕はロンだ。君が……」
「ハリーから聞いています。1930年代から来ました、リックです。その、孤児院にいてファミリーネームがその孤児院の名前なので……」
おっどろき、というロンにリドルは微笑み、ファミリーネームというファミリーネームはないと説明する。ロンはマグルの方で戦争やってた時期なんだってな、と頷くとリドルの手を取った。バシン、という音ともにダイアゴン横丁にやってきたリドルとロンはじゃあ先に、と制服を新調しに行く。
「僕の彼女がマグル出身なんだけど、君の年代を聞いてね、それで教えてもらったんだ」
魔法界もそこそこ関わったらしいけど、というロンにリドルは純血の家系か、と見立てる。50年後にはこれも当たり前なのかもしれない、とすぐに切り替えた。それにしてもどこか警戒心の薄そうな男だとリドルは周囲を見ながら考える、
制服を新調し、魔法薬の材料を買い直す。これは50年前は割とずさんで、細かな材料が混ざっていたことが多かったらしい。事前にダイアゴン横丁の歴史を調べていた彼女が、店主が変わってから質が良くなったというところに目をつけ、原因を調べた結果わかったことだとロンは言う。
「まだ大丈夫そうなら本屋に行こうか」
ブレスレットが時間なんだって?というロンの言葉にリドルはブレスレットを確認する。初めて門の外に出た時に減ったのを確認したが、あれは満タンから減った、という事でその速度で減り続けるわけではないらしい。まだ半分ほどあることから4,5時間は持ちそうだ、とリドルは答えた。
「なるほど。それがなくなったら何が起きるかわからない以上余裕を持った方が良いな」
「とりあえず本屋で今も同じ教科書が手に入るか確認して、次の機会の時に購入でもいいでしょうか」
そもそもこの時代に有るかどうか確認したい、というリドルにロンはそれもそうだな、と頷き本屋へと入っていった。リドルが行けばどうして古いものが必要なのかと訝しむだろうが、大人のロンであれば理由を言えば買えると、そう彼女に言われたと言いながらロンが写しをもって奥に行き、店主に確認をする。
資料として欲しいという声が聞こえ、リドルは店内を見ている、という風に離れると少し考えて偉人や関連書籍などの欄を見上げた。
「ダンブルドア校長……さすがに悪夢過ぎる。ハリー=ポッター……、あぁハリーか。なるほど、書籍がいくつも出ているな。名前を言ってはいけないあの人……闇の帝王……」
嫌いだ、と口の中で言葉をつぶすリドルはハリーの本を見つけ、ぱらりと開く。そこに見えた共通点のある名称に目を止めた。
ちらりとロンを確認すれば店主がメモを取り、いくつかは今ある物と同じだと本棚から本を取ろうと探している。今ならといくつかハリーの本を手に取り、奥の方にあった例のあの人に関する本を手に取った。ついでにダンブルドアの本も手に取り、店員のところに行って購入する。結構な額を用意してくれたハリーに感謝しつつ、包みを購入した制服の間にねじ込んだ。
「よし、いくつか探さないとだめらしいから、明後日僕が取りに行くでもいいし、またリックが取りに来てもいいと思う。そこらへんは要相談だろうな」
じゃあ行くか、と本屋を後にし羊皮紙や羽ペンを購入すると、ロンはちらりとリドルを見た。うーんと悩むロンを見上げるリドルはその視線の先に目を移し、何だと眉を寄せる。見たこともない建物は恐らくはハリーの時代にできたのだろう。
「あぁ、あそこはうちの兄がやっている悪戯専門店だけど……まぁ……見ても害はないか。甘い物は好きかい?」
悪戯専門店というロンにリドルは顔をしかめそうになって、すぐに頭を切り替える。
「あまり甘いもの自体を食べたことがないので……。ホグズミードの買い物も……僕には財産がないからきっと何も買えないと思いますし」
ホグワーツで食べる甘味しかないというリドルにロンははっとして、ちょっと待っててというとリドルを店先において中へと入る。にぎやかな声が聞こえ、しばらくすると両手いっぱいの袋を抱えたロンが出てきた。
「ハリーも暇だろうし、普通のも混じっているから、残りの夏楽しんでくれよ」
それじゃあ帰ろう、とそういって袋を片手で抱え直すともう片方の手でリドルの手を取り、姿くらましをした。