自分の世界に入って出てこないヴォルは減点にも、謎のマルフォイにも反応を示さず、どんよりと静かに闇を垂れ流すだけで動かない。
 固まるハーマイオニーや自分が言われたわけではないのに衝撃を受けるロンと共にえぇっと言いたいハリーだが、隣からくる負のオーラにどうしようと小さくため息を吐いた。
「ヴォル!」
 ハリーの声にびくりと肩を震わし、ヴォルは恐る恐る顔を上げる。
「落ち込む前に一言。いつもヴォルが朝の挨拶いうようにって言ってるように一言あるでしょ」
 珍しくおどおどとした様子のヴォルにハリーがきつく言うと、あちらこちらに視線を動かす。
「ごめんハリー……。ごめん……」
 小さな声で謝るヴォルにマクゴナガルら大人は心の中でえぇえっと声を上げた。
しゅん、とうなだれた弱弱しい姿と以前の姿がまったくもってつながらない。
「うん。びっくりしたけど、昔よりは随分ましだったからいいよ。さっきの話聞いてた?」
「うっ……。あれは……本当に謝ってもたりないというか……。馬鹿が馬鹿やって根……スネイプ……先生に見つかった話なら聞いてた」
 ハリーの言葉にマクゴナガルらの眉がピクリと上がり、ヴォルの言葉にスネイプのこめかみに青筋が立つ。
 影で自分の事を何と言っているのか……若干漏れ聞こえた気がして追加で減点してやろうかとこめかみがひくりと動いた。
「罰則は明日各自に通達します。ハーマイオニー・グレンジャー、ロン・ウィズリー。二人は寮に戻りなさい。ハリー・ポッターとヴォル・セルパンは倒れていたと言う話ですので今夜はここに残りなさい」
 昔の話とは何か……森で倒れていたことも含めて話を聞くため、マクゴナガルはハリー達に残るよういうと、ハグリッドと共に立ち去るハーマイオニーらを見送る。
 足音が遠ざかるとちらりとスネイプをみてからどうせわかっているでしょう、とマクゴナガルはハリーのベッドに腰をおろしている問題児と、少年とを見つめた。
 
 
「先ほど、ミスグレンジャー達には伝えていませんでしたが……森で何があったんです。それと、先ほどの昔ほどひどくない、と言うのは一体何ですか」
 さぁ、と促すマクゴナガルにハリーとヴォルは顔を見合わせた。
「気絶したポッターとセルパンを運んだ際、喉元の痣は目に見えぬよう、薬を塗った。なぜ急にポッターの首を絞めようとしたのかね?」
 あの森で気絶した二人を運んだのはスネイプだったらしく、ハリーの喉を手当てしたと言われてヴォルは視線を落とす。
「声が……。昔、聞こえていた声が……。聞こえた気がして、気が付いたら……」
 小さな声で呟くように答えると自分の手を握っているハリーの手をそっと撫でた。
「緑の閃光……知らない男と、女と……赤ん坊の夢。今すぐ赤ん坊を消さなければと……そう声が聞こえて。ハリーの声で幻が消えた」
 ヴォルのつぶやきに寮監二人は目を見開いた。
あの夜の詳細を知っているのは赤ん坊のハリーを除いてただ一人。
 赤ん坊で詳細を知らないハリーとは違い、当事者だった彼は当然大人で何が起きたかも理解できたはず。
「緑の閃光……。ヴォル、初めて僕にいつもうなされている悪夢の事話してくれたね。ヴォル、小さい頃階段から突き落としたり、御飯に洗剤混ぜてきたり、ずっと僕の事嫌いだったもんね」
 閃光、と呟くハリーは拳をぎゅっと握ると困ったように微笑む。
今は違う、と否定するヴォルはハリーの手を強く握る。
「今は誰よりもハリーが一番大事だ。なのに……あの幻でまたあんな馬鹿なことを……」
 ごめん、と抱きしめてハリーの首元に顔をうずめる。
子供のただの悪戯では済まされない悪事が聞こえてスネイプとマクゴナガルの二人は顔をこわばらせた。
やっぱり中身はあれだ、と考える。
 魔法の力の使い方を知らないからこその方法だろうが、魔法の力をハリーが発揮していなければ大怪我で済まされないことばかりやっている、と本当にこの二人このまま一緒にさせていいのだろうか、と頭が痛い思いだ。
 
 
 またこの件はダンブルドアに相談しなければとマクゴナガルはため息を吐いた。
「それで森では何をみたんです?」
 ヴォルの悪事がわかったところで、森で何があったのかとマクゴナガルは促す。
「森で……ユニコーンの血を飲んでいる……男?の姿が……。それと銀色の雌鹿?のゴーストみたいなのを見た」
「僕もユニコーンに顔をうずめている人の影をみました」
 ね、と顔を見合わせる二人にマクゴナガルはスネイプをみる。
「確かにローブを着た人物が逃げて行ったが……。それよりも倒れた二人を救助する方に気を取られていたのでな」
 詳しくは見ていない、と言うスネイプにヴォルはあれはスネイプの呪文だったのか、と考える。
とりあえず、罰則についてはまた明日というマクゴナガルは寄り添う二人に目を移す。
 ユニコーンの血をすする人物……。
 あの夜の記憶がフラッシュバックされてやはり当初の目的であったらしいハリーの命を狙った少年。
何か関連があるのかと、考える。
 
「分霊箱……」
 ぼそりと聞こえた声にはっとなるマグゴナガルは、ハリーが聞き返そうとして眠りに落ちたヴォルの肩を軽くゆする姿を目に入れた。
 貴方ももう眠りなさい、とハリーに伝えると、ハリーの手を握ったまま眠ったヴォルをそのままにして部屋を出る。
 スネイプが続けて出ると聞きたいことがありますと声をかける。
「噂で聞いた話ですが、彼が……分霊箱を作ったとして何に入れたか心当たりはありますか?」
「分霊箱の話は聞いておりますが……はっきりとした形状までは。ただ、複数個ありいくつかは信頼できる部下に預けてあると」
 詳しくは、と言うスネイプにマクゴナガルは何かを考え込み、明日また話を聞くこととしましょうと話を終えた。

 
「ほーくらっくす?」
 朝になり様子を見に来たマクゴナガルが、ハリーの寝顔を見て上機嫌な様子の少年に聞くと少年は首を傾げた。
「昨日それを呟いていたように聞こえましたが心当たりはないのですね?」
「聞いたことがある気はする……。闇の魔術に関する呪いの道具とかそう言う系統か……」
 繰り返し訪ねるマクゴナガルにヴォルは眉を寄せてうーんと考える。
 
『ア』
 不意に何か言葉の様なものが脳裏に浮かんですぐに消えた。
その言葉自体もずきんとした痛みと共にどんな言葉だったかすぐに忘れてしまった。