なにをいまさら

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 ハーマイオニーは真剣な様子の友人の姿に何を今更?と首をかしげた。
その首をかしげた行動に自分の悩みが伝わらなかったのかと、ハリーは真剣でいて、恥ずかしさで顔を赤くしながらだっだからね、と繰り返した。
「僕ってマゾなのかな。」
 隣にいたロンに至っては何がどういうしたのかと目をしばたかせ、困った様子のハリーをみる。
「どうしてそう思ったの?」
 マゾかどうかはさておき、ハーマイオニーはハリーが今付き合っている相手を少し前に聞いている。
 ハーマイオニーはきいた当初は驚いていたが、ロンたちのように直接的な恐怖はないため、まぁそれで平和になるなら、と応援するようになっていた。
 ハリーの悩みにロンは固まり、なんの話?と目を点にしている。
「だっだって…。ほら、僕のその…彼氏と言うかその…彼…って、あれでさ、最近どういう時にドキッとするかなーとかちょっと考えてたらね…。9割ぐらいその…ちょっと意地悪してきたときとか、強引な時とか…なんかそういう時が多いような気がして。」
 顔を真っ赤にしながら必死に話すハリーにロンはますます意味がわからないと言う顔をしている。
 ハーマイオニーとしてはむしろ付き合った時にすでにあの危険人物を好きになるなんて物好きね、と考えていた。
 自分を殺そうとしていた相手を好きになるなど…どんだけマゾなのかと、そう考えたのを思い出す。
 
「えっと…ハリー、前に恋人できたって言ってたのって…同性だったんだ…。ちょっとびっくり。」
「あ、…えっと…うん。その…なかなか言い出せなくてごめん。えっと…同性で歳は…割と上かな。それでハーマイオニー、どう思う?」
 戸惑うようなロンの言葉にハリーは言いだせなくてごめんね、と言うとハーマイオニーに改めて向き直った。
「そうね…付き合っている相手があれなところで、少なくともそういうところがあるんじゃないかしらって思っていたわ。」
「えぇ!?そっそりゃあヴォルは…ヴォルデモートは…独占欲強いし、嫉妬心強いし、我がままだし、思い付いたがままに行動するほど好奇心あるけど…僕が相手しなかったりするとすねちゃったり、しばらくぶりに会うと寂しあった分スキンシップすごいし…サドじゃないよ!」
 ハーマイオニーがため息交じりに答えると、ハリーは必死になって彼…ヴォルデモートの事を弁解する。
 ついつい愛称で呼んでしまったハリーが名前を言いなおすと、ロンの思考が完全にストップする。
今最も聞いちゃいけない名前が出てきたような…そんな驚きの顔だ。
 
「あのねぇハリー。これは私の考えだけど、サドってたしかに相手をいたぶったりするのが好きだろうけど、最初からマゾな人を弄ったところで楽しくないと思うのよ。だからどちらかと言うとハリーを好きになって、どういういきさつか知らないけど付き合うようになって、ハリーがそういう傾向があるって知ってから、彼の方が貴方をいじることに目覚めた…。だから相手が最初サドじゃなくても自分がマゾじゃない証明にはならない…むしろ相手がサドになっちゃった時点で、ハリーがマゾだっていう証明になるんじゃないかしら。」
 もしくはその気があったとか、とそう付け足すハーマイオニーにハリーは真っ赤になって頭を抱える。
 どうやら思い当たる節があったようで、真っ赤になった顔を必死に手を隠し、言葉にできないようだ。
「そっそういえば…。ヴォル…会うごとにどんどんエスカレートしてる気がする…。ヴォルが僕にいじわるするようになったのって…僕のせいかもしれないなんて…」
「まぁ、もともとそっちにもその気があったのかもしれないけど…。それでも最初を思い浮かべるとやっぱりあなたが、ってことになるんじゃないかしら。」
 恥ずかしい、と顔を覆うハリーにハーマイオニーが付け足すと顔を覆う手の隙間からうめくような声が加わる。
 すっかり思考が停止していたロンは恥ずかしがる友人と、すこし楽しげな友人の姿にもう何が何だか、とため息を吐いた。
 とりあえず、得た情報を受け入れるまでしばらくは黙っていよう、とロンは羽ペンを片付ける。
 
 
「それはそうとハリー。そろそろ時間じゃないの?時間とかうるさそうなイメージだけど…。」
 僕はマゾじゃないはずと言っていたハリーはハーマイオニーの言葉に顔を上げ、時計を見て慌てて透明マントを手にじゃあ、と走って行った。
 再び固まっているロンは走り去っていくハリーを見送り、改めてどういうこと?とハーマイオニーを見上げた。


 叫び屋敷に入ったハリーはちょうど入ってきたヴォルデモートと鉢合わせし、久々の逢瀬に会えない時間を埋めるように抱きしめ会う。
口づけをかわし、もう一度強く抱きしめ会うとソファーに腰を下ろした。
「最近便りないから心配だったんだ。元気そうでよかった。」
「魔法省の奴らが目障りでな。少し潜伏していた。」
 座って見つめるハリーにヴォルデモートはニヤリと笑い、ハリーの肩を抱く。
「あ、そうだ…。ねぇヴォル。」
 ずっと離れている分、こうして抱きしめ会うのがうれしくてヴォルデモートの肩口に顔をうずめていたハリーは気にかかっていたことを本人に聞くこととした。
 
「僕…マゾじゃないよね。」
 向き合い、ヴォルデモートの手を握るハリーは親友にも聞いた質問を繰り返した。
言われた闇の帝王は顔を赤くしてねぇ、という恋人を表情を変えずにマジマジと見つめる。
親友と同じ反応にまさかとハリーは慌てる。
「まっマゾじゃないよね!」
「何をいまさら…。」
 逆に違うのかと言うヴォルデモートにやっぱり!とハリーは違うよと必死に否定する。
そんな様子に深々と溜息をつくとハリーを抱き寄せて顎をすくいあげた。
「それではハリー…。マゾじゃないという証明は?」
 顔を上げて目を合わすヴォルデモートにハリーはえぇっとと少し考える。
「ほっほら、痛いのとか…クルーシオかけられて嬉しいわけない。」
「あれは肉体的というよりも精神的な苦痛と…魂事態に作用するほどの呪文だ。あれを気持ちいいというような輩は今まで見たことがない。だからそれを証明にすることはあまり適切ではない。」
 痛いだけだよ、と言うハリーにヴォルデモートは違うだろうと否定した。
あれを受けて喜ぶ…一週回って逆に見てみたいとすら考えるヴォルデモートにハリーは困ったように唸る。
 目を細め、困っているハリーを見つめていたヴォルデモートはにやりと何かを思いつく。
その笑みにぞくりとした高揚感がハリーの背に走る。
「ではハリー…俺様の悪戯に喜ばなければマゾじゃないと見てやろう。」
 ハリーの顔に赤みが走ったのをみてくつくつと笑うヴォルデモートはさて、何をしたら降参するかと、悪戯を考えた。
 
 
 結局、ハリーがマゾだったかそれとも、ヴォルデモートがサドだったのか…。
翌日、土曜の昼に戻って来たハリーをみてハーマイオニーは小さくため息を吐いたのだった。



-fin




ふと、このサイトのヴォルハリにおける闇落ちしていないハリーって、結構マゾくないかと思いまして…(笑)
個人的に真性サドはマゾ以外をマゾにする人で、真性マゾはサド以外をサドにする人って考えてます。
だって、最初から調教済みじゃ弄る楽しみがないじゃないですか。
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