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 じっと見つめる赤い目にどうしたの、と声をかけ乗せていた布を冷やし直す。
「あ、そうだ。汗かいて気持ち悪くない?シャワー浴びるの辛かったらタオルで拭くだけでも違うと思うよ。」
 どうする?と首をかしげるハリーにヴォルデモートは少し考える。
 正直、シャワーを浴びる元気はない。
 ハリーが来なければ体を引きずって行こうかとも思っていたが、ハリーの顔を見ていたら気が抜け、無理をする気力がなくなってしまった。
 だが、拭くとなるとハリーが手伝うだろうし、何より自分だけ服を脱ぐのが気分的に嫌だ。
それと、絵図ら的に嫌なキーワードがちらつき、むっつりと黙りこむ。
 そんなヴォルデモートを見ていたハリーはどういう条件で傷越しに相手の感情やら考えが伝わるかよくわからないが、それでも今現在ヴォルデモートが気にしていることがなんとなく伝わり、思わず笑いそうになる。
 普段はお互いに全く気にしていないし、そういうつもりもないが一番、心の奥底で年の差について気にしているらしいヴォルデモートにくすくすと笑ってしまう。
 考えていることがハリーに知られていることに気がつき、笑っている姿をにらむヴォルデモートはぷいっと反対側に寝返りを打つ。
「ヴォル、笑ってごめんね。怒った?」
 普段見せない姿になんだか嬉しくなって笑ったハリーはまだ笑みをひっこめられないまま向こうを向いてしまったヴォルデモートに声をかける。
 黙ったままのヴォルデモートにすねちゃった、と内心呟きごめんね、とその背に身を寄せた。

 体重をかけないよう、そっと寄り添うハリーをちらりと振り向き、ヴォルデモートは別に怒ってはいないと答える。
 とんとん、とノックする音が聞こえ、ハリーが離れると途端に背中に感じたハリーの体温が冷えていくことにヴォルデモートは振り向く。
 温かそうな湯気を上げる器を持って来たハリーは器を置くと起きれる?と声をかける。
 頷き、ベッドの上で上半身を起こすと、ハリーは素早くクッションを背中に置き、ゆったりとした姿勢になるよう準備をする。
 つらくないかと問うハリーの顔が近くなり、体調さえよければとヴォルデモートは悶々と考え、そもそも体調不良でなければこうして会えなかったことに思い付きため息を飲みこんで大丈夫だと答えた。
 食事ぐらいは自分で食べれる、とハリーの手からスプーンを奪い取ると、またしてもハリーは嬉しそうに笑いながらじゃあ着替え用意するね、と立ち上がる。
 なんとなく面白くないヴォルデモートだが、冬休みを利用してきたというハリーの言葉を思い出し、さっさと治して残りの日にちで楽しませてもらおう、とナギニに着替えの場所を聞くハリーを見ながら柔らかく煮込まれた食事を胃に押し込んだ。
 一瞬ハリーに食べさせてもらうという選択肢も考えたには考えたが、できることならそのままハリーごといただきたい。
 だが、とハリーがきてからずっと自制していることを思い出し、顔をしかめる。
早くうつす心配なくハリーと冬休みを過ごしたい、と薬を飲み横になった。


「シャワーにする?」
 はぁ、とため息を吐くヴォルデモートは急に間近で聞こえた声にはっと振り向いた。
 ハリーを組み敷くことを考えていたなんて言えず、シャワーはいいという。
 
 結局、ハリーに手伝ってもらいながら体をふくことにしたヴォルデモートは、杖で温めたぬれタオルで前を拭くと背中をやるというハリーにタオルを渡し、背を向けた。
 まだ成長しきっていない手の感触にそういえば背後にハリーがいるのは初めてだな、と考える。
ふと、拭く手が止まり、ハリーが背中によりかかかることに振り向くが、背中に顔をうずめたハリーの顔は見えない。
「ハリー?」
「手紙ずっと来なくて…。前もあったからまた忙しいのかなとか、またしょうもないこと考えてるのかなとか…。でもルシウスから体調不良で寝込んでるって知らせがあって…。すっごく心配したんだから…。」
 タオルを落とし、ヴォルデモートの背にすがりつくハリーの言葉に、しょうもないこととは何だと言おうとして、消え入りそうな震える声を聞き背中から回された手に自分の手を重ねる。
「きっと弱ってる姿見せたくないから死喰い人を近づけさせないだろうし…。でも…ヴォル、さみしがりだから…。強がりばっかりだけどそれでも…。一人じゃ心細いかなって考えて…。すっごく心配したんだから…。ただの風邪でよかった…。」
 背中から抱きつく形になったハリーの震える声に合わせて背中に温かなものが流れ落ちる。
すがりつく手をはがし、振り向いたヴォルデモートは赤く染まった目尻に口づけ、震える唇に不安にさせた分を補うように深く口づける。
「ハリー…。」
 ずっとそばにいられない分、何かあったらと思う気持ちはヴォルデモートも同じこと。
ハリーがクイディッチで大けがでもしたら…また危険なことに首でも突っ込んでしまったら…そう考えるだけでも側にいてやりたい。
 抱きしめ、泣いているハリーの髪をなでると柔らかな髪に顔をうずめる。
「治ったら覚悟しておくんだな。」
 耳元でささやくヴォルデモートにハリーは涙を止めると、顔を赤らめた。
「なっなんでそうなるの。」
「俺様の事を考えて心配して泣いている姿に欲情しない奴がどこにいる。」
 心配したんだからごめんとかないの?と抗議する声を無視し、体調不良に陥らせた風邪の菌を本気で恨む。
 先ほどの口づけでうつったかもしれないがまぁ多分大丈夫だろうと棚に上げ、出されていた服に着替えて横になる。
「眠い?」
 先ほどの不安に押しつぶされそうだった気配はどこへやら、問いかけるハリーに早く治す、と短く答えた。
「せっかく冬休みここにいるのならば…さっさと治して不安にさせた分を補う。」
 体が弱っている今、ハリーにこれ以上弱いところを見せたくない、と寝ることにしたヴォルデモートはその思惑が知られてしまったのか、くすくすと笑うハリーを軽く睨み、目を閉じる。
「おやすみ、ヴォル。心配で不安になるのはとっても苦しいけど、隠さずおしえてね。じゃないと僕、安心できないから。」
 ハリーはヴォルデモートの額に口づけ、うわかけの中で手を握る。
善処しよう、と答えハリーの手を軽く握り返すと数分後にはヴォルデモートの寝息だけが部屋に静かに聞こえる。
 ヴォルデモートが眠った後、緊張の糸が切れ座ったまま船を漕ぎだしたハリーに気を利かせたヘドウィグとナギニが協力して毛布をかけると、彼女たちもまた静かに眠りについた。




 
~fin

 



そういえば書いてなかった風邪ひきネタです。
結構ヴォル様いじってます。
その結果、書いている途中で一回エラーになって半分吹き飛びました…
おふぅ…
ちょっと絵図らを想像したら介g…んっうん。


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