貴方がいる幸せ

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 今年も積もったなーとハリーは外を見つめ、最近便りのない手紙を探して空を見上げる。
「ハリー、今年は冬休み家で迎えることになったの。少しさみしいけど、また来年ね。」
 そう声をかけてきたハーマイオニーにロンも僕も今年はという。
夏でさえ家に帰りたくないハリーは今年も当然のようにのこることにしていた。
「うん。課題で困ったら手紙書くかも。」
「返事がずっと遅くなってもいいならいいわよ。」
 ハリーの冗談にハーマイオニーは笑い、悪戯っぽく答える。
「あーあ。なんで今年はチャーリーのいるルーマニアに家族でなんて話になってんだろう。僕もホグワーツに残りたいよ。」
「あら、ドラゴンの世話のお手伝いとか?」
 なげくロンにハーマイオニーは首をかしげ、ドラゴンの研究をしているロンの兄の職業を思い浮かべる。
「違うよ。ドラゴンじゃなくてチャーリーの世話というかお見舞い。ドラゴンに尻尾で跳ね飛ばされたって連絡来て、それで。どうせならみんなで行きましょうって話になったらしいんだよ。」
「ドラゴンの尻尾か…。ノーバート…とかだったらなんか悪いね。」
 僕とかジミーが行っても何にもならないだろうにさ、というロンにドラゴンと聞いて真っ先に思い浮かべた懐かしいドラゴンの名をハリーは思い出す。
まだ幼いドラゴンでさえあの凶暴さと力。
「多分違うと思うけど懐かしいなぁ。ついでに聞いてみるよ。もし見れたらノーバートの様子見てくるから教えるね。まぁドラゴンに跳ね飛ばされるのは仕事がらよくあることらしいんだけど、運悪くそのままちょっと崖から転げ落ちたらしいんだ。」
 一年生の時の強烈な思い出として残っている3人は懐かしいねぇと話しながらロンの兄の話しをしつつそれぞれの予定を話し合っていった。

 列車が出発し、見送ったハリーは部屋に戻るとトランクから袋を引っ張り出し、どうしようかなと悩んでいた。
 彼と付き合い始めて初めて迎える年末。ひょんなことから知った彼の誕生日に用意したもの。
 本人としてはおそらくあんまり好きじゃない日かなと思いつつ、それでも好きな人の誕生日に何かあげたいとこっそり用意した。
 ごまかすためにクリスマスと称して少し早く送れば大丈夫かなと考えつつ、直接渡せないことに小さなため息をつく。
「ヴォル…手紙来ないなぁ。」
 はぁ、とため息をつくハリーはここ最近便りのない誰もが恐れる闇の帝王の…最愛の恋人の姿を想い浮かべる。
 変温動物の蛇のような出で立ちなのに、最後にあった時は防寒具すらけていないことが気になり、体調を崩す前にせめてこれぐらいは、と購入したプレゼントだが、喜んでくれるかどうかはわからない。
 気分転換にちょっと図書室にでも行こうかな、とハリーはプレゼントをしまい寮を出た。

今年は全体的に残った生徒の数が少なく、とても静かな城内はすれ違う生徒もまばらだ。
ふと、そこにワシミミズクがすべるように廊下を飛び、顔を上げたハリーに向かって下りてくる。
「あれ…?たしか…君はマルフォイの。僕?」
 首をかしげるハリーにワシミミズクは早く受け取れと一通の手紙を差し出したままハリーを見つめる。
付き合っている人が付き合っている人なだけに、実はマルフォイとも若干交流がある。
ごくまれにヘドウィグがハリーの手元にいるときなどにマルフォイを通じて手紙が渡されることがあり、それでこのワシミミズクの事も知っていた。
 手紙はこれまた珍しいことにルシウス=マルフォイからだ。
全く身に覚えのないことに手紙を開くと読んでいたハリーの眼が見開かれていく。
「どっどうしよう。体調不良なんて…。まってて、今返事書くから。あぁでもその前にマクゴナガル先生に許可をもらわなきゃ。君、もう少し待っててくれる?急ぎの仕事を頼みたいんだ。」
 手紙を読み終えたハリーは慌てて手紙をたたむと、廊下を走る。


 息を整え、緊張しつつ扉をノックすると、マクゴナガルはすぐに顔を出しなんです、と不安げなハリーを見つめる。
「あっあの、その…僕が今住んでいるおじさんから叔母さんが急に倒れたという手紙をもらいまして…。その…大したことじゃないらしいですけど、ちょっと心配で…。てっ手紙は迷った時に行くもんかって燃やしちゃって今手元になくて…。でも燃える手紙を見ていたら大事になったら本当に親族がいなくなっちゃうと思ったら急に不安になってしまって。せっ先生、家に帰る許可を頂けないでしょうか。」
 走りながら考えたことをつっかえながら話すハリーにマクゴナガルは怪しむ視線を向けた。
 目は極力泳がせないようにしつつ、どうしても緊張してしまうハリーは不安げに目を細め、真偽を疑うマクゴナガルの視線を受け止める。
 わずかな時間、沈黙が流れ、だめかとハリーは肩を落とす。
「いいでしょう。ポッター。明日の列車で帰りなさい。」
「ほっ本当に!?あっありがとうございます。」
 マクゴナガルは何か書類を手に取るとサインを書き、ハリーに手渡す。
思わず笑顔になりそうなのをこらえるハリーは頭を下げると急いで寮へと戻っていく。
その後ろ姿に廊下は走らない、と声をかけるマクゴナガルは、昔一度だけ見たハリーの叔母の姿を思い起こしていた。





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