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 足音が聞こえ、ドアが静かに開いてもハリーは眠りから覚めず、衣擦れの音が静かに部屋を横切る。
くつくつと笑う声が聞こえた気がしてようやくハリーは目を覚まそうとして、まだまだ寝ていたくてとろとろと夢と現実の狭間でさまよう。
 ふいに大きな手がほほにのばされ、上向かされた顔に誰かが覆いかぶさる。
驚いて目を覚ますハリーは深く口づけられ、唇を食まれると、甘いため息がこぼれ出る。
「あの爺に呼び出されてきたが…まさか本当にハリーがいるとはな。」
「ヴォっヴォル!?なっなんでここに?え、もしかしてダンブルドア先生の言ってた知り合いって…。」
 杖が振るわれ明かりに火がともると、黒いローブに身を包んだヴォルデモートがハリーの目の前にたっていた。
 そのことに驚くハリーは目をしばたかせ、なぜここにいるのかと寝起きの頭で必死に考える。
 仰ぎ見るように立ったままのヴォルデモートを見るハリーは信じられないと寝起きの頭をたたくように頬をはたいた。
 
「12月31日の間にここに来なければ二度とハリーとは会わせないと言われてな。疑いながら来たのだが…。何か聞いているか?」
「えっと…今日は相手のめでたい日だって…あ!そうか!今日がヴォルの誕生日なんだ!」
 理由は知らないというヴォルデモートをまじまじと見るハリーはダンブルドアの言葉から、ハリーが何を聞きに行ったのか知っているのかと、いまさらになって顔が赤くなる。
「12月31日…あぁ。そういえばそうであったな。」
 少し考える風のヴォルデモートは思い出した、という風に少し眉間にしわを寄せた。
やっぱり嫌な日かな、と思うハリーだが、ひるんではいられない。
でも、選んだプレゼントがマグル製品なのは…少し選択ミスだったのかもしれないとプレゼントの箱に軽く目をやる。
「えっと…その…いやな日かもしれないけど、僕にとっては大切な人が生まれた日だからお祝いしたくて…。ダンブルドア先生の知り合いに渡す用のプレゼントって聞いていたけど、そのヴォルに渡すなら何がいいかなっていうので考えて…。」
 あぁ気に入らなかったらどうしようと、焦るハリーはじっと自分を見下ろすヴォルデモートに、久々の威圧感を感じながら立ち上がるとプレゼントを目の前に突き出した。

「ハッピーバースデー、ヴォルデモート。気に入らなかったらその…」
 受け取るヴォルデモートに落ち着かないハリーは自分とプレゼントを見る赤い目に最終手段はハーマイオニーの冗談を使うしかないかもしれない、と考える。
「いや、確かに自身としてはあまりめでたい日ではないが…不思議だな。ハリーにそういわれるととてもうれしく思えるとは。」
 笑みを浮かべ、再びハリーに口づけると箱を開け、中から木の香りがする彫刻を手に取る。
「これは…ヒノキで作られた…確か東洋の花、ダフニ…沈丁花とかいう花だな。」
「想像上の花じゃないの!?」
 確か、と考えるヴォルデモートに驚くハリーはさすがに闇の帝王が花の小物なんて似合わないか、とため息をついた。
「この花の意味を知っているか?」
「今花の名前知ったぐらいだから…」
 ニヤリと笑うヴォルデモートにハリーは首を振り、知らないという。
「栄光、不死、永遠…不滅。この素材であるヒノキもほぼ同様の意味だ。つまりこれは不死を表す…俺様にはぴったりのものだ。」
 知らなかったとはいえ、これを送りものにするとは、と笑うヴォルデモートはことりとテーブルに置き、ハリーを抱きしめて深く口づける。
 久しぶりの逢瀬ということもあり夢中になるハリーは、離れたヴォルデモートの視線に気が付き、ダンブルドアからの届け物を思い出す。
「あ、そうだこれダンブルドア先生から…。あれ?カードが付いてる…。」
「カードはどうでもいい。どうせ書いてあることは想像がつく。ハリー、開けてみろ。」
 中身ももうわかった、というヴォルデモートの前で箱を開けたハリーは中身にあ、と小さく声を上げた。

 二人分のショートケーキが顔を出し、開けた瞬間につくようになっていたのか数字を模したろうそくに火がともる。
 杖をふるい蝋燭ごと消したヴォルデモートはあの爺と青筋を立て、皿とフォーク、紅茶を出した。
そのままケーキを皿に乗せるとそれをハリーへと渡す。
 新しく椅子を出したヴォルデモートはハリーの隣に腰を下ろし、中ほどまで食べたところで食べ終わったハリーに渡す。どうやら甘すぎたらしい。
 ハリーがケーキを食べている間、例のカードを見たヴォルデモートはたまには気が利くな、とさすがのハリーでさえぞっと背筋に何かが伝う笑みをこぼし、おもむろに箱についていたリボンをハリーの首に巻き付けた。
 嫌な予感に逃げようとして、杖で押さえつけられる。
そのままベッドに運ばれ、どさりと降ろされると覆いかぶさるヴォルデモートを見上げた。
「ホグワーツ特急の切符には日付が書いてなかっただろう。」
「うっうん…まさか!!」
 これ以上ないほど楽しそうなヴォルデモートにはっとなるハリーはぞんぶん楽しませてもらおうという恋人に顔を赤らめ、蛇に余すと来なく丸のみされていった。


 ほかの生徒が冬休みから戻る日、その中に混じるハリーはもうほんと勘弁して、マフラーをしっかり首に巻き付ける。
 みんなとシャワーしばらくは使えない、とダンブルドアからの余計な計らいに耳を赤く染めた。
ホグワーツ特急の切符には日付が書いてないことと、休暇最終日を書くなんて、どうぞその日までといっているようなものだ。
 でも、と窓から外を見るハリーは今年も年末、祝ってあげようとすがすがしい晴れた空に思いをはせた。
 ひとまずは…心配しているだろう親友たちになんて話せばいいのかと、小さくため息をついた。




 
~fin

 



2016年:ヴォル様、誕生日おめでとうございます~☆
ちなみにハリーは想像していたとおりに近い状態で、1日の昼は列車の中を熟睡していたそうです。
年の差5×歳♪バカップルでした。


2020年:がっつり修正。
とりあえず、プレゼントとハリー滞在期間を変えました。
ヴォル様…ケーキは相当気に入らなかったようで、ダンブルドアからのプレゼントとしてリボンを付け替えてみました。

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