視線と視線でポッキーゲーム
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先に目をそらした方が負け
特にルールはないけども、チームでやるときは短い方が勝ち
唇がくっついたら負け
折れたら負けか、リスタート
じゃあ、二人でやったら勝敗はどうなるの?
視線がからみ、徐々に縮む距離。
ふと、耐えられなくなって視線をそらす。
その間も視線を感じてハリーは足早にそのわきを通り抜け、ロン達が先に待っている大広間へと向かう。
食卓に並んだ料理の中、グラスに盛られているお菓子にハリーは珍しいなとハーマイオニーの隣に座る。
先に食事をとっていたハーマイオニーはハリーの視線に気がついたのか、一本引き抜いた。
「珍しいわよね。お菓子が出ているなんて。11月11日がちょうどそう見えるからって一週間出るらしいわ。」
さっき掲示板に書いてあったの、というハーマイオニーはぽりぽりとそれを食べてそういえばという。
「ポッキーゲームっていう二人が両端から食べて折れたり、先に口を離したら負けっていうゲームがあるわね。チームで別れてチーム内で食べて残った長さが短い方が勝ちとかあったとおもうけど…。」
結構短いわよね、というハーマイオニーは真っ二つに割ってそれぞれを食べる。
「それってハーマイオニー…折れなかったりどっちも最後まで意地張ったらその…。」
もぐもぐとハーマイオニーが食べるポッキーを見ていたロンは両端から食べると想像して、その行きつく先を思い浮かべる。
罰ゲームでやることが多いらしいわね、というハーマイオニーにロンはだよね、という。
そんな二人のやり取りを聞きながら食事をとっていたハリーは不意に先ほどの事を思い出していた。
もしあの時、目をそらしていなかったら…。
先に目をそらしたのは自分。
だからきっと負けということになる。
それじゃあ因縁つけてきたらあちらの負けで、視線をそらしたら負け、とハリーはこの一週間やってみようと、ちらりと教員席を見る。
ふと、再び視線がからみその視線の意図がわからずただじっと、そらして負けたくはないと見つめ返す。
急にどんっと、背中を押され視線が外れる。
躓いたらしいネビルがごめんと、倒したコップを立て直し、ぶつかったハリーに謝る。
大丈夫だよ、というハリーは再び教員席に視線を送るとそこにはもう彼はいない。
1勝1敗無効1回。
そう考えるハリーはつい先ほど点数こそ引かれなかったものの、ぐちぐちといつも通りの因縁を思い出してはぁっとため息をついた。
それにしても、こうも視線がからむのはどうしてだろう、と考えて自分はどうして見てしまうのか…どきりと高鳴る胸に戸惑う。
そんなことを考えたせいか、廊下ですれ違うたびに絡まる視線が何か意味があるんじゃないかと考えてしまい、どうしても途中で視線がそれてしまう。
「最近やたらとスネイプとすれ違っている気がするよ。」
「そうかしら?そういえば…授業がない日でも顔を見ている気がするわね…。」
ポッキー週間とひそかにつけられた一週間が終わるまであと一日。
そんな日にスネイプとすれ違ったロンはなんか妙に多い気がする、と口をとがらせ、ハーマイオニーもまたいわれてみればという。
これまで1勝9敗で無効4回。
確かに多いかもしれないと、ハリーはなんでだろうと考える。
普段は地下にもぐっているはずなのに…やたらと廊下で出会う。
出会うたびにその数を数えていたハリーはじっと自分を見る視線を感じてちらりと後ろを振り向いた。
そこにはもう黒い服の姿はなく、なんでこんなに意識してるんだろうと、首を振ってハーマイオニー達と共に図書室へと向かっていった。
ポッキー週間最後の夜、大広間を出たところでウッドに捕まり、チームメイトと共ども使っていない教室でミーティングを行ったハリーは図書室に続く廊下を走っていた。
いつも使っていた羽ペンを忘れていたことに気がついてだったが、もうしまっているかもしれない。
ふと、暗くなった廊下に黒い人影を見て一瞬立ち止まる。
走っていたら何かいわれそうだ、とそう長年染み付いた思考が立ち止まらせたのと、きっとこれが最後になるであろう“ポッキーゲーム”に歩いて挑みたかったということがある。
じっと見る視線に自分の視線をからめれば最後ぐらいスネイプに視線をそらさせて、それで勝ち逃げしたい、と視線が逸れそうになるのを必死にこらえる。
あともう少しで触れ合うところで、視線をそらさないようにというところに意識を集中させていたハリーはスネイプの前に立ちふさがるようにしていることに気が付き、はっと顔を青ざめた。
何かいわれるに違いない、と立ち止まったハリーは視線をそらす。
「これで10勝。最後まで我輩の勝ちだったな。」
上から聞こえた声にはっと顔をあげると極至近距離にスネイプの顔があり、ハリーは顔を赤らめた。
とっさに後ずさりしようとしたハリーは頭を抑えられて視線がスネイプで埋まる。
触れた唇にはっと目を見開くハリーに一度離れたスネイプの視線が再びからむ。
目を閉じたハリーにもう一度二人の隙間がぴたりと埋まった。
唇がふれた二人っきりのポッキーゲームはどちらの負けだったのだろう、と再び至近距離で見つめ合うハリーはスネイプの背に腕を回し、今度は自分から隙間を埋めていった。
~fin
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