願いを込めて
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日差しが暖かくなってきた春の金曜日。
いつものように夕食を取りに向かうハリーは人だかりを見つけ、立ち止まった。
なんだろうかと近付けば先に起きていたハーマイオニーがいて、すぐ隣に行く。
「ハーマイオニー。何この人だかり。」
「私もさっき来たところで…何でもイースター祭りに関してのお知らせらしいわ。」
「ハリー、先に行っちゃうんだもん。ん?イースター祭り?またダンブルドア校長の思いつきかな?」
後からやって来たロンはハーマイオニーの言葉に首をかしげ、長身を生かして貼られた掲示板をみる。
「あー…なんか明日、構内を使ってのエッグハントをやるって。希望者には卵を渡すからペイントするようにって。」
エッグハント、と聞いてハーマイオニーとハリーは顔を見合わせ、今まで卵型のチョコレートを梟便でやり取りしたことはあっても、そういうゲームはやっていなかったことに少し驚いていた。
「そういえば…ダンブルドア先生の事だからこういう行事あってもおかしくなかったわね。」
「本当に今更って感じだけど…なんか意外かも。でも僕、じつをいうとやったことないんだよね。家が家だったから…。」
懐かしいというハーマイオニーにハリーも頷くと、そういえばと思いだした。
ダドリーのせいでそういう行事は卵をぶつけられたり嫌がらせされたり…そもそも呼ばれたこともない。
「僕はほら、家の周りが開けているし兄弟が多いから小さいころやってたなぁ。せっかくだしハリー、この機会に楽しもうよ!」
ロンとハーマイオニーはちらりと顔を見合わせてから頷き、面白そうだなと言うハリーを連れて卵を受け取りに行った。
「先ほど張り出された明日、構内を使ってエッグハントを取り行おうと思っておる。ただ探すだけでは面白くないじゃろう。そこで参加は自由じゃが、一番多く集めた寮には追加点をだすのと、ただの卵もあるんじゃが、中にはちょっと変わったものが入っている卵も用意した。中身はお楽しみじゃ。それと、ここにおるわしを含めた教員が作った卵も隠されておるが、寮監4名には特別な卵をいくつか渡しておる。それを手に入れた寮はボーナス得点を贈ることとする。詳しくはまた明日の朝食で説明するとしよう。ペイント希望のものは夕食後、少しこの場に残るように。」
夕食前にとダンブルドアが説明すると、初めは興味なさそうな顔をしていた生徒までもが目を輝かせ、近くにいる仲間に声をかけている。
寮の得点となれば参加しないわけにいかない。
そんな生徒の様子を楽しげに見つめるダンブルドアにマクゴナガルはため息をつき、スネイプはこれ以上ないほどの仏頂面で座っていた。
夕食後、その場に残るハリー達の前のかたづいた机に白い卵と専用のパレットと筆が現れる。
「この卵はすべて茹で卵ではないため、多少乱暴に扱っても大丈夫じゃが、故意に壊すと何が起こるかわからんぞ。」
悪戯っぽくウィンクをするダンブルドアは朝までに塗ればここで仕上げなくともいいと言う。
ハリー達は顔を見合わせるとここでぬろうと筆をとった。
「さすがハーマイオニーきれいに塗るね。」
「久々に塗ったから少し歪んじゃったわ。ロンってば急いで塗るからにじんでるわよ。」
手を汚しながら塗る3人はお互いに卵をみながら楽しげに笑いあう。
好きなクィディッチチームのカラーであるオレンジに塗ったロンはロゴを書こうとしてやめたあとが赤い羽根のようになっているのを少し不満そうに見て、鮮やかなハーマイオニーの卵をみる。
色とりどりの卵は流石に慣れているだけはあり、ハリーは手に持った自分の卵をみて思わず苦笑した。
とりあえず、緑に塗ったもののとなりのハーマイオニーをみて、スニッチの金を入れてみたり、そうだヘドウィグの白色もと付け足し…まぁ何とかなったはものの、昔見かけたものとは全くできが違う。
うーんというハリーにハーマイオニーは大丈夫よ、と笑う。
「初めてなのにとっても素敵よ。描いたら…あぁ、あそこに置くのね。どこに隠されるのか今から楽しみね。」
「マルフォイとかに見つかったら馬鹿にされそう…。最後まで見つかりませんように!!」
台の上に置きながら楽しみだね、と言いあうとハリーはなんだか恥ずかしいなと笑う。
翌朝、外に出る扉の前にはフィルチがおり、早起きして場所だけでも見てこようとした生徒はしぶしぶそれぞれの寮の席へと座る。
浮ついた空気の中、いつも通り朝食が始まり、それが終わると参加する生徒…全生徒が説明を待っていた。
「ルールは各寮ごとに設けられたこの枠に入れた卵の種類でポイントをつけていくんじゃ。この枠を通された卵には見ない印がつけられるため、もう一度通そうとしても無駄じゃが、中のお楽しみのために手元にとっておくことができる。中身のお楽しみは結果発表時まで内緒じゃ。得点はこの枠を通した時に黄色に光れば10点、緑に光れば5点、赤く光れば2点、白く光れば1点。それまでは色を塗ったものでもわからないようになっておる。寮監4名に渡した特別な卵は金色に光るんじゃが、それもどれかは通してみてのお楽しみじゃ。隠し場所は森、温室内、城内以外に隠しておる。制限時間は夕食までじゃが、もしも全ての卵がなくなった場合、それをもって終了とする。それでは楽しんで参加するように。あぁ、そうじゃ言い忘れておったが、呪文でヒトの卵を奪うこと、また誰かを傷つけた場合、その危害を加えた寮の卵の高得点のものから順に割れて点数から引かれるため、くれぐれもフェアなプレイをするように。そぉれスタート!」
ダンブルドアの説明に舌打ちをするスリザリン生がいたが、開始の合図とともに一斉に生徒たちは外へと飛び出した。
ハリーとロン、ハーマイオニーもそれぞれ探しましょう、といって別れてハリーは辺りを見回すが隠されていそうな茂みとかはもう探されている。
うーんと考えるとそうだ、と箒を呼び出した。
“城内以外”といったけど城壁はどうだろうか、と箒にのると塔の横を通る。
「あった!」
さっそく一つを見つけ、ハーマイオニーから借りていた小さな袋に入れると、ふと横を通るフレッドに気がつく。
「やっぱりハリーも気がついたんだな。あっちこっちでクィディッチの選手が飛びまわってるぜ。」
俺らは今からおいてくるところ、とジョージとともにそれぞれ3つ持っている状態を見せると俺らがいない間ハリーしっかり!といって飛んでいくと、ハリーは誰もいないような場所を狙って飛びまわり、3つほどで袋を膨らませるとそれらを一度枠に入れに戻る。
「ハリー!あ!3つ見つけたんだ。僕も今置いてきたところ。卵はさっき座ってた席に置いてきたんだ。」
外に出るところのロンに出会い、僕は4つと聞いてハリーは頑張ろうねと言いつつ楽しいなと持っていた卵を枠に通してロンの席の隣に置いていく。
今度は人気のないような場所を飛び、ゆっくりと探す。
色の暗い卵はスピードを出すと見落としがちになるため、目を凝らしてしっかりと見つめた。
昼の時間になり、疲れたハリーが戻ると大広間にはやはり探しつかれた生徒がぐったりと座って昼食を取っていた。
「ハーマイオニーも結構見つけたね。」
「えぇ。なかなか難しいわね。これなんて温室の窓枠に置いてあったのよ。白くて見えなかったの。」
これこれ、と純白に塗られた卵を見せるハーマイオニーは5つの卵を手に笑う。
星空をイメージした黒い卵には星がちりばめられ、キラキラと光っている。
「多分これフリットウィック先生の塗った卵の一つね。10点だったわ。」
「本当に!?僕のは1点ばっかり。ハリーは?」
「僕も一つだけ10点であとは5点とかだったかな。10点のは多分マクゴナガル先生のかな。手に取るまで猫かなっておもってたから。」
高得点のは先生らが塗ったもとい魔法をかけているんじゃないか、と3人は考えた。
普通の卵も取らなければだが、こういう不思議な卵はきちんと取っていこうと午後も頑張ろうとやる気を出した。
そろそろ箒で飛ぶ時間じゃないかなと考えるハリーは夕暮れになった空にため息をつき、すっかり箒の姿が減った空をみる。
諦めるかなと一週回ると緑色の光をみた気がしてゆっくりと降下していった。
影になっていて気がつかなかったが、黒い影からちょっと覗いている緑色のものは夕日を反射し、きらりと輝いている。
手にとればそれは、まるで翡翠のように少し黒い筋や雲のような白い筋が描かれた緑色をしており、宝石のようだ。
思わず見とれるハリーは慌ててしまうとそろそろ時間だ、と大広間へと戻って行った。
「あらハリー。まだあったの?」
「うん。影にあったから見落としてたんだ。」
「すごいなぁそれ。誰がつくったんだろう?」
大広間に戻るとすでに最後の集計なのか枠に入れる列ができていた。
ハリーが手に持っている卵をハーマイオニーとロンは覗き込み、どの先生の塗ったものかと話し合う。
「翡翠…なんとなくハリーの目を連想するわね。」
「えー。ただの宝石好きだろう。それよりハリー!早く入れてきなよ!」
本当にきれいね、と言うハーマイオニーにロンは反論し、ハリーを押しだす。
ドキドキしながら枠に卵を通すと金色の光があふれ、ハリーは目をしばたかせた。
「やったハリー!これ特別な卵だ!」
後ろで見ていたロンの歓声にグリフィンドールが沸き立つ。
ふと、ハリーは教師陣をみるが、ほとんどの席は空いたままで誰もいない。
「今日はどうじゃったかの?隠した卵もほとんど見つけたようじゃし…では結果を発表しよう!特別な卵の発表は最後に換算とする。スリザリン182点。ハッフルパフ153点。レイブンクロー155点。グリフィンドール178点。特別な卵を発見した寮には追加で30点とする。4つのうち2つを見つけたようじゃな。追加点はハッフルパフとグリフィンドール。最終結果は一位グリフィンドールには50点の追加得点を贈る。2位ハッフルパフには40点の追加得点を贈る。3位スリザリンには30点の追加得点を贈る。4位レイブンクローには20店の追加得点を贈る。順位は以上じゃが、よく頑張った!盛大な拍手を送ろう。それでは最後に楽しみにしていたじゃろう、それ!」
ダンブルドアの言葉でわーっと歓声が上がり、各々が取って来た卵を机に並べる。
一つしか見つけられなかったというネビルにハーマイオニーとハリーは持っていた卵を渡すと、あの翡翠の卵をしっかりと握る。
ちらりと教師の席をみると朝と変わらない顔のスネイプと目があって慌ててそらす。
卵が光り、割れると中から花束や羽ペンが飛び出し、驚きの声や喜びの声が上がる。
ハリーの翡翠の卵からは不死鳥のような光り輝く鳥が羽ばたき、ハリーの頭上を一週回った後、翡翠の卵を産み落とし、徐々に消えながら教師のいる席へと向かう。
「きれい…。流石に特別な卵ね。」
「すごいなぁ…。あ、ハッフルパフからも鳥が飛んでる。」
他の席からは小鳥などが飛び立つ中、ひときわ光る鳥にハーマイオニーやロンはきれいだねと呟いた。
消えていく鳥から目を放し、ハリーの手の中に残された翡翠の卵に目を落とす。
消えていく鳥をみていたハリーは驚いたように自分をみる黒い瞳と目が合い、手に持った卵型の宝石を握りしめた。
手に残った宝石に目を落とせばきらりと輝き、励まされたような気がしてハリーはあることを決意した。
明日、授業が終わった後に、と決心したハリーはなんとなく卵を見つけた場所が見える場所まで透明マントを被りやって来た。
外から見ていたためどこだろうかと、記憶を頼りにやって来たハリーは中庭と言うほどでもない小さな緑のある庭から窓枠の出っ張ったところを見上げる。
「こんな夜に出歩くとは、英雄殿は規則をしらないらしい。」
風にあたろうと、透明マントを脱いだハリーが背後から聞こえた声に驚いて振り向くと、そこには腕を組んだスネイプが闇に同化しながら立っていた。
どきりと胸を高鳴らせるハリーはそっとポケットに入れていた翡翠を握る。
「こっここにあった翡翠の卵…。あれはスネイプ先生の作った特別な卵…ですよね?鳥が…先生のところに飛んで行きました。」
勇気を出して声を出すハリーにスネイプは何も言わず、じっと見返してくるハリーを見つめる。
すぐ否定しないことにハリーは宝石を握りしめて口を開く。
「もしも…もしもスネイプ先生の特別な卵を見つけられたら…。その…勇気を出してみようって…卵塗りながら考えてて…。」
無言のスネイプにだんだんと声が小さくなるハリーは俯き、どうしようと考える。
明日と考えていただけに、逆に心の準備ができていなかったハリーは手の中の宝石から勇気を得ようと握りこむ。
「えっと…その…」
緊張で混乱してきたハリーは無意識に一歩下がろうと足を動かした。
後ろに動くと思っていた体は逆に前に強くひかれ、誰か…スネイプに抱きしめられる。
「続けたまえ。」
抱きしめるスネイプの声が響き、ハリーは驚いて目をしばたかせた。
抱きしめられたハリーは耳にあたるスネイプの体から自分と同じくらい早い鼓動が聞こえ、混乱していた頭がだんだんと収まってくる。
「先生の事が…スネイプ先生の事が好きなんです。その…先生がもし…っ!」
スネイプの顔を見ていられず、抱きしめられたまま告白したハリーはスネイプの反応をうかがおうと顔を上げた。
スネイプの手がハリーの顎を捉え、ハリーの顔に少し長いスネイプの髪が当たる。
唇をふさぐ温かな感触に驚きで目を見開いていたハリーは目を閉じ、すがるようにスネイプを抱きしめ返す。
ハリーの頭を自分に押し付けるように抱きしめるスネイプはハリーの髪に口づける。
「この特別な卵は…最も心に残っている色を映し宝石にすることができる。その色になった時、もしもこれを見つけたのがこの色を持つポッターであったのならば…明日の授業で罰則を口実に呼び出し…後悔がないようにするつもりだった。あれだけある卵と、それを探す生徒に限りなく低い賭けであったが…。」
抱きしめるスネイプの言葉にハリーは信じられないと顔を赤くし、スネイプを見上げた。
「まさかポッターが…ハリーが同じ賭けをしていたとは…。」
「先生…」
どこか嬉しそうなスネイプにハリーは顔をほころばせて、静かに口づけをかわした。
~fin
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