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ひっそりとマグルでさえ近づかない山奥。
魔法薬を煎じていたセブルス=スネイプは突然訪問者で驚いたようだが、その人物が誰だか分かると部屋に通した。
茶を出し、その偉大な魔法使いに何の用で来たのをたずねた。
「セブルス、ひとつ頼みごとを請け負ってはくれんかの?実はハリー…といえば誰だかわかるじゃろうが…そのハリーの様子を見てきて欲しいんじゃ。…その…もし危険だと判断した場合…報告をして欲しいんじゃが…。」
ハリーといわれればただ一人しか居ない。闇の帝王からただ一人の生存者。
そして闇の帝王を消し去った赤ん坊。
今は母方の妹家に引き取られていると聞いていた。
「何故そのような事を?貧しい家ではないと伺っておりましたが?」
危険状態とは生命の危機にさらされているという意味か、もしくは魔力に関して何かとんでもない事をしているのか二つ。
ダンブルドアはなんともいえぬ表情を取り、なんとなくじゃ、と顔を曇らせ立ち去ってしまった。
残されたスネイプは父親に似ていると聞いていたために、後者だろうと予測し、プリべット通りに向かった。
夏の暑い日差しの中、マグルの格好といえども黒い服に身を包んだスネイプはかなり浮いて見える。
「何やっているんだ!さっさとしないと夕飯は抜きだ!!何だ小僧、全然終わっていないじゃないか!!」
突然響く怒声にスネイプが目を向けると赤ら顔の男が庭に向かって怒鳴っていた。
「ごっごめんなさい・・・。」
慌てて飛び出してきた子供は手を泥だらけにして男のもとへと走っていく。
途中、石畳のつまずき、転んでしまったが男は苛立たしげに舌打ちをし再び怒鳴る。
「なんだあの父親は。このようなものがあのポッターの近所にいるとは…教育上問題があるのではないだろうか…!?」
ちょうど、男の子が立ち上がったと同時にバタンッと内側から閉められた扉を見ると、スネイプは目を疑った。
「プリベット通り34番地…。まさか…。」
慌てて男の子を見ると
真っ黒で癖のある髪。
緑色の瞳。
そして額にうっすらと見える稲妻の傷痕。
噂で聞いていたハリー・ポッターの姿と同じであることにようやくスネイプは気が付いた。
窓から同じ3歳だと思われる丸々と太った子供が、ハリー・ポッターだと思われる子供に向かってニタニタと笑いを浮かべている。
「経済的にも…食に困っている様子ではないな…。ではなぜあんなにも…細いのだ?」
締め出されてしまった事に泣きながら庭の手入れをし始めた子供は今にも折れそうなほど細い。
スネイプですら気が付いてはいなかったが、気が付くとその子供の目の前に立っていた。
「あっ…おじさんは誰?」
土で汚れた手で顔を拭ったせいで、顔中泥だらけになる。
相手が誰なのかを一生懸命見ようと目を細めているが、よく見えないらしい。
「きさ…君がハリー・ポッターかね?」
聞いたことのない声にハリーは脅え、小さく首を動かすだけとなった。
中でなにやら子供が騒ぎ、ドタドタと玄関に走ってくる音が聞こえ、先程の男が顔を出した。
「おい、お前は部屋にでも戻っていろ!!さて、どなたでしょう?それともご依頼でしょうか?」
「バーノン・ダーズリーだな。」
その家の主人、バーノンはスネイプが放つ独特の威圧的なオーラに一瞬ひるんだようで、すこし扉を閉めかけた。
「いっ一体どちら様で…。」
「我輩はセブルバ・スネイプ…。ダンブルドアよりハリー・ポッターの様子を見てくるよう言われてきたのだが…。ダンブルドアが分からんとは言わないな?」
スネイプがダンブルドアの名前を出したとたん、バーノンは顔色を赤から白へとかえ、完全に扉を閉めようとした。
が、完全に閉まるより先にスネイプの手が扉を掴み、無理やり開いた。
「かっかっ家宅侵入罪ですぞ!!」
「ならばこちらは児童虐待ということを訴えますが?」
「あっあれは教育の一環だ。」
声が変に高くなっているバーノンに比べ、スネイプの声がどこまでも落ち着いていた。
「とにかく…このままこの家にいたのでは命に関るかもしれん。よって、ハリー・ポッターは我輩が連れて行く。ポッター!荷物をまとめて来なさい。」
ペチェニアが反論しようと口を開きかけたが、どうしようか迷った挙句ダドリーをつれ、奥に逃げていってしまった。
突然自分の名前を呼ばれたハリーは、驚きながらもおずおずと物置の中に入り、極わずかな荷物をスネイプの前に出した。
何せ今のスネイプの表情は有無を言わせないといった感じだったのだ。
「小僧!!お前何をしているんだ!!!」
「受け取るほどの物ではないようだな。」
バーノンが引き戻そうとしたハリーの腕をスネイプが捕まえ、引き寄せる。
「安心しろ。これまでの養育費くらいならば後に届けさせましょう…が、さほどかかってないとみられる。」
では失礼する、とスネイプは言い残し、ハリーを抱えるようにして足早に立ち去っていいった。
まったく。
なんで…。
連れて来てしまったのだ!!
確かに自分は様子を見に行くだけであったのだが…あまりの待遇に嫌気が差し、勢いでつれてきてしまったのは事実。
かといって今更あの家に戻すのも…スネイプは嫌であった。
家に帰るなり、何がなんだか分からないと言った表情のハリーをひとまず浴室に連れて行き、泥を落とさせたら念のため傷の手当をしなければと考えたスネイプはフクロウ便を飛ばした後、棚から軟膏を取り出しハリーが出てくるのを待っていた。
そういえば目を細めていたなと思いつき、メガネも買わなければとスネイプは考える。
「セブルス…連れてきてしまったようじゃな…。」
若干落胆したような想像の範囲内だったと言うような声が聞こえ、スネイプは素早く振り返った。
「ダンブルドア校長。たった今フクロウ便を飛ばしたところですが…流石に情報は早いようで。あまりの待遇に少々嫌気がさしましてな。」
常に冷静な判断を下すスネイプでさえ、冷静になりきれなかったと言う事でダンブルドアはため息をついた。
「本来は血縁者の傍にいなければならんのじゃが…。しかたないのう。それではホグワーツに入れるまでの間…もしくはそれ以降も責任を持ってハリーを育てるように。頼んだよセブルス。そうじゃ、そうじゃ。それではハリーのご両親の残した…グリンゴッツの鍵じゃが、しかるべき時まで持っていてはくれんかの。それと…教職をとってもらいたいんじゃが…。よいかの?」
そういって差し出したのは小さな鍵…グリンゴッツの金庫の鍵だ。
「承知しましたダンブルドア校長。ですが、教職となると…ここを離れる時間があまりにも長くなるのでは。」
「分かっておる。じゃから…勤務中はホグワーツにハリーを連れてくるといいじゃろう。わしが預かっておるんでな。」
何の問題もないとばかりにダンブルドアはウィンクをし、奇妙な時計で時刻を確認すると立ち去っていってしまった。
厄介な事になったとばかりにため息をつくスネイプの背後で、ハリーが出てきた。
小さな子供用の服は持っていなかったのだが、それより先に傷の手当てをと思い、目に付いた痣に片っ端から薬を塗っていく。
ふと、フクロウ便が大荷物を持って飛んできた。
警戒しつつ包みを開くと…何枚…いや何十枚もの服の数々。
あて先人は先ほどの魔法使い。
いつ用意したのだとスネイプは頭を悩ませる。
ひとまずそれを着せ、ひと段落着いたところで飲み物を入れに行った。
ハリーはというと、あっという間に傷がなくなったことに驚き、一体何がどうなっているのか全くわからないという顔をしていた。
その日、魔法使いであると言う事を言われ、目を丸くするハリー。
そして両親の事を聞いたハリーは驚きと悲しみに満ちた目でスネイプにすがる。
その様子にスネイプはため息をつくと、優しく飛び跳ねている髪を撫で付けた。
そして…11歳になりホグワーツへと入学したハリーは、グリフィンドールへと入った。
「ポッター!!何だこの前レポートの出来は。それに貴様…未提出のレポートがいくつあると思っておるのだ!!!!!!」
「酷い!!せっかく書いているのを邪魔した挙句いちゃもんつけてきて、挙句の果てには問答無用で再提出再提出!!出来上がるはずないでしょ!!それに再提出の時は必ず新しいみんなとは違う課題押し付けて…。ちゃんと授業中に言われた課題は出しているじゃないですか!!」
「あんなレポート誰が受け取るか!!あんな不出来なもの。再提出は再提出だ。それに追加するのは当然の罰だ!」
「だからって…家にある資料じゃなきゃ分からないような課題押し付けないでくださいよ!!」
「えぇいうるさい!!グリフィンドールから10点減点!」
「先生!!自分の言葉に詰まったら減点するの止めて下さいよ!!そんなんだから家に帰っても間違えて減点って言っているんですよ!!」
「ぐっ…それは常日頃の態度が悪いのであろう。悔しければ授業中の態度を改めるのだな。」
「もういいですよ。早く授業始めてください。」
「ポッター!!」
初めはクラスメイト達の誰もが驚いた光景だが、今ではお馴染みとなった授業前の光景。
今日も親子喧嘩が地下牢に響き渡る。
「いい加減こんな危険なスポーツをやめたらどうだ!!」
「あぁもう!!心配してくれるのは嬉しいけど…何も毎回毎回練習を見に来なくてもいいでしょ!!」
ーfin
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