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ごくありふれたのどかな午前…人気のない廊下を授業に向かうため、少年2人と少女が歩いていた。
ふと…何かの視線を感じたのか、少女は隣にいた少年の足を神業的な素早さで払った。
突然のことに驚いた少年…ハリーはなすすべもなく地面に激突しそうになる。
「突然教師に向かって飛び掛ってくるとはいい度胸押しておるな。ポッター。グリフィンドール1点減点。」
「!?すっスネイプ先生!?」
「なんだというのだね。早く離れたまえ。」
「すみません…」
あわや転ぶという所で何処からか現れたスネイプにハリーは助けられたのだ。
慌てて飛び退くとスネイプはマントを翻し立ち去る。
「うげぇ~。どっからわいてきたんだよ。あの根暗教師。」
スネイプが立ち去ったあと、ロンはまるで蜘蛛を見た後のように言った。
「ハリー大丈夫?」
転ばせようとした張本人とも知らずにハリーはハーマイオニーに大丈夫と笑いかけた。
最近3人で歩いているとき階段から落ちそうになったり、廊下で転びそうになったり突然上からモノが降ってきたりとハリーはついていない。
もっとも、全てハーマイオニーの仕業とは知るよしもなく、なぜかその全てをスネイプに助けられていたのだ。
ハリーの周りにだけ神出鬼没なスネイプは一体どこにいるのか見当もつかない。
(あら♪30mはなれたところに発見♪次はどんな体制でハリーを助けてもらおうかしら♪)
いつ仕込んだのかスネイプの日常的に着ているローブにはハーマイオニー特性発信機が取り付いていた。
そのため、30m以内にいるとポケットに隠してある小物が反応する。
腕で抱きとめているのはもう見飽き始めている。
そろそろ…
(押し倒してもらおうかしらvvとなると…危険だけれどもスネイプにも攻撃しないと。)
(最近一体何が起きているのだ?ポッターの周辺にばかりおかしな事が…。)
スネイプは頭を抱えていた。
30m程先にはハリーがいる。もちろん。姿は一切見せない。
この行動は密かに抱いている感情のせいであった。
入学当時から抱いている想い。
それは日に日に大きくなり、後をつけるようになったのだ。
…それともう一つ、心配だから。
特に双子には気をつけないと何時何をしでかすかわからない。
想いを寄せているハリーに対し、先を越されたりでもしたら……。
そう思うとスネイプはぞっとした。
自分よりも先に手をつけることは許さん!という想いを胸に、ハリーを見守る。
《さっさと手をつけてしまえば良いような気もするのだが》
ふと、上を見上げると小石がハリーめがけて落下し始めているではないか!
慌てて物陰からするりと抜け出すと、ハリーを半ば突き飛ばすようにし、抱きしめた。
背後で小石が跳ね返る音がし、音がやんだ頃に目を開ける。
ビックリして同じように目をつぶっているハリーも目を開けた。
まさに目と鼻の先にお互いの顔がある。
…その瞬間、目が合いスネイプは思わず唇を接近する。
「ハリー!大丈夫?」
あともう少しで触れるはずだった唇は離れ、埃を払いながら立ち上がる。
勢いとは言え押し倒してしまったことには変わりなく、スネイプは減点もせず足早に立ち去ってしまった。
「ハリー?顔赤いよ?」
真っ赤になり、混乱しているハリーにロンが心配して声をかける。
(萌え~~!!!作戦成功☆ばっちり写真にも収めたし♪でも惜しかったわねぇ…あともう少しだったのに…ねぇスネイプ教授☆)
いつ頃だったか、スネイプの気持ちに本人よりも先に気がついている、ハーマイオニーは上機嫌だ。
ついでにハリーも実は好きだということをも知っている。
そのためか心の中で萌えを連発し、ガッツポーズをとりそうになる。
おそらく未だにドキドキが収まっていないであろうハリーを立たせ、大広間へと急ぐ。
「ハーマイオニー。何してるんだい?」
熱心に羊皮紙に書き込みをしているハーマイオニーにロンは眉を寄せた。
「ちょっと今日のまとめをね♪」
「?」
羊皮紙には数字やSやwと書かれ、何のことだかさっぱりわからない。
ハーマイオニーにしかわからない暗号で書かれた羊皮紙には今日のS氏ストーキング記録が書かれているとは知るよしもなく、肩をすくめるとロンは近くプティングを頬張った。
(接近が今日一日で54。時間にして1時間に2~3回は30m以内にいるのね。<にやりw>それで・…えっと。腕で抱きとめたのは一日21回。押し倒しは1回。キス寸前が同じく1回。えぇっと他には…)
っと計6行に渡り細かな字で書き綴っていく。
(あら?1時間に2~3って授業はいいのかしら…。きっとサボりはないでしょうから…移動時間だけでこんなにも接近しているの!?呆れたわ…)
「ポッター。貴様には呪いがかかっておる可能性がある。他の生徒に呪いが移る前についてきたまえ。」
突然現れたスネイプはハリーの腕を掴むなり告げる。
「え!?呪い?そんなわけないじゃないですか。」
「グリフィンドール5点減点。早くきたまえ。」
一瞬ハーマイオニーを睨むように見やると羊皮紙を見、舌打ちをすると何も言わずにハリーを連れ立ち去る。
数ヶ月後…地下牢のとある一室にて、こんなやり取りが行なわれていた。
「ところでセブルス。ハーマイオニーが『今日は接近30回♪萌えるわね♪』って言っていたんだけど何のことかわかる?」
「ぶっ!…まだグレンジャーは…ごほっ、そんなことを…けほっ、…まったくあやつは・…。」
実はあの後、想いを告げる事ができたスネイプは、コーヒーを飲んでいたが膝上に座るハリーの言葉に、咽た。
「どうしたの?セブルス。」
「なんでもない。気にするな。彼女の趣味の話であろう。関わるとろくな事にはならん。」
意味ありげな言葉にただ首を傾げるだけのハリー。
次の日、ハーマイオニーは呼び出されたが知らぬ存ぜぬで突き通したとのことである。
そして秘密裏に取引が交わされていたという噂もかすかに流れていた…らしい。
―――終
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