------------

ふかぁい山の麓、ホグワーツ村でのこと。
そこには村一番活発で可愛い男の子がおりました。
迷子にならないようにと被った赤い頭巾姿から赤ずきんちゃんと、親しまれています。
 村の中で薬草に囲まれた、他の人を寄せ付けにくい一軒の家から赤ずきんちゃんがお出かけ用の少しひらひらとしたローブをまとい、籠を片手に元気よく出てきました。
 これから村から離れた所に住む病弱な先生へ薬のお届けをしに行くようです。

*************

「じゃあスネイプ先生、お薬届けてきますね。お仕事、頑張ってください。」
「あぁ、すまないハリー。本当は私が行かなければならないが…。薬を渡したらすぐに村に戻るように。今日は明るいかもしれないが、それでも夜道は危険だ。まっすぐ向かい、薬を渡してすぐに戻れば十分間に合う。くれぐれも寄り道や無駄話をせず、行って戻りたまえ。」
 振り向いた赤ずきんちゃん…ハリーは中から出てきた黒い服の男…スネイプに、にこりと笑いかけます。
 少し疲れた様子のスネイプは何度も念を押すようにハリーにすぐ戻ることと繰り返し言い聞かせていました。
 ハリーもそれを破ればどんなことが起きるか、よく心得た様子でこくりを頷き、心配してくれてありがとうと、自分より背の高いスネイプを抱きしめるように抱き着きました。
  笑顔と愛らしい姿に頼まれている仕事を放り出して今すぐに寝室に連れ込みたいと、ぐっとこらえるスネイプはそっと屈みこんで愛らしい恋人の唇にやさしく、甘い口づけを落とし、じゃあ行ってきますと駆けだしたハリーに零さないようにと注意すると、彼を迎えに行けるよう薬づくりに戻りました。

 村から出たハリーはしっかりと蓋のされたゴブレットと、ついでにこれも持っていくといいと渡されたかっちかちのチョコレートがしっかり籠に入っていることを確かめ、そうだお花を持っていこうと少し道をそれた花畑に向かいました。
 小柄ですばしっこく元気いっぱいのハリーは少しぐらいそれてもその分走れば大丈夫と、お花を摘みます。
 そこへ狼の耳を付けた…狼?の男性が近づいてきました。

「おや、赤ずきん。こんなところで何をしている?」
「こんにちは、狼さん。これからルーピン先生のところに行くんです。狼さんは?」
 狼のような蛇のような男はせっせと花を選んで籠に入れるハリーの頭から足先までじっとりと嘗め回すように見つめて、そっと目を細めます。
 それに気が付かないハリーは少しでも家を明るくしようと思って、と摘んだ花を見せました。
「それはいい心がけだ。俺様はヴォルデモート。ナギニとともに散歩をしていた途中だ。少し先に咲いたばかりの花があった。匂いが少し強いがとても形の良い花だ。」
「ありがとうございます。じゃあそれを摘んだら先生の所に行かなきゃ。」
 あちらだ、とヴォルデモートが示すのはちょっと離れた丘です。確かに色の綺麗な花が揺れているのが見えました。大蛇がするすると這って行くのも気に留めず、お礼をするハリーはいったん摘んだ花を整えるよう座りました。
「道中気を付けるがいい。」
 明らかに不敵な笑みを浮かべているヴォルデモートはくるりと背を向け立ち去ります。
不思議な狼さんだったと今更ながら首をかしげるハリーはそんなこともあるかなとローブをはたいて立ち上がりました。


*************

 ハリーと別れたヴォルデモートはナギニとともに近道を急ぎ、小屋の前へとやってきました。
 戸を軽くたたけば中から誰かと返事が返ってきます。
「ルーピン先生、ハリーです。お見舞いに来ました。」
 なるべく声を高くし、ヴォルデモートが答えます。
「おや、ハリーかい?あ、もしかして…あれ、なんだか声が…妙に高いような…。」
 男の声が答えますが、戸は開きません。
10秒も経たないうちにヴォルデモートは戸を蹴破り、中にいた病弱なルーピンに襲い掛かります。ぎょっとしたのはルーピンで完全に反応が遅れてしまいました。
「うわっ!ヴォルデモート!?え、ってことはあの声…どっから出したんだあの声!」
「煩い!大人しくしろ!ナギニ、こいつを床下に閉じ込めておけ!」

*************

少しのんびりしすぎたかもしれないと道を急ぐハリーはゴブレットを極力揺らさないよう走っていました。
戸の前で息を整え、静かに戸をノックします。
すると戸はいとも簡単に倒れ、2度目の衝撃耐えきれずそのまま砕けてしましました。
「え…どっどうしよう…。あとで考えよう。ルーピン先生、ハリーです。入りますね。」
 しんとする部屋に足を踏み入れるハリーは寝室に誰か眠っていることに気が付きました。
少し薄暗い部屋に入ると、盛り上がった寝台の横に座ります。
「やぁハリー、よく来たね。疲れただろう。」
 ナイトキャップを被ったルーピンは顔の半分を毛布で覆っているので表情が分かりません。
「あれ?ルーピン先生、どうしてそんなに赤い眼をしているの?」
 少しぎらついたような目は確かに赤く、ハリーは首をかしげます。
「あぁこれはハリー、お前のらた…顔を見たくてずっと待っていたからさ。」
「そっか。えっと…どうしてそんなに耳が大きいの?
「これはお前の喘…声を聞くためさ。」
「ルーピン先生…どうしてそんなに大きいの?背が伸びたのかな。」
 薄暗いせいでよく見えないながらにも違和感を覚えるハリーにルーピンは淡々と答えます。
 それでもベッドから少しはみ出た足が気になるハリーは首をかしげてもっとよく見ようと立ち上がりました。
「これは…ハリー、貴様を押し倒すためだ!」
 腕を引っ張られ、寝台に乗せられるハリーは驚いたまま組み敷く男を見つめます。
それはあの道で出会った狼?のヴォルデモートでした。
「なっなに!?っ!??」
 驚くハリーの抵抗をものともしないヴォルデモートはさっと愛らしい赤い唇を奪い、息を奪うように深く口づけ、ハリーから力が抜け…。
 唇を放し、ぺろりと舌なめずりするヴォルデモートは力が抜けたハリーの服に手をかけ、いよいよと迫ります。

「ちょっと待ったあ!!似非狼め!ハリーから離れろ!!!」

 玄関から大声を上げるのは犬の耳をした男性。壊れた戸の上に立ち、ハリーを組み敷くヴォルデモートをにらみつけます。
「シリウス!!」
「何の用だ犬。」
「何の用だと!?ハリーから離れろ!蛇狼!!」
 ぎりぎりとにらみつける犬…シリウスを見たハリーはほっとしたように声を上げます。思わぬ邪魔者が入ったことに舌打ちをするヴォルデモートは起き上がりハリーを抱き寄せました。
 こうなってはシリウスも下手に動けません。
 しばらくにらみ合いが続き、慌てた様子のナギニが床下から這い出るとそのまま外へと逃げ出していきました。
 それと同時に何かの唸り声とどんと床をたたく音が小屋に響きます。
「いったいなんだ。」
「まさか…。」
 青ざめるシリウスに危険を察したヴォルデモートは床を見ます。
 そのすきにハリーはするりと抜け出ましたが籠の中を見てあっと声を上げました。
「先生の脱狼薬…今日の分まだ飲んでないのに!」
 窓からは満月が顔を出し、あたりを照らしているのが見えます。
続く振動で床板の間から人狼の手が突き出され、その隙間からはギラリとした狼の目がのぞき込んでいました。
 我先にと逃げ出すヴォルデモートとハリーとシリウスは床のメリメリという音を背後に外へと飛び出しました。
 森に向かって走っていく二人を人狼が追いかけます。
人一倍のすばしっこさで先にはなれていたハリーはルーピン先生ごめんなさいと謝ると、今度は心配しているであろう恋人の所に向かって駆けだしました。
 村が見えてきた、ということで何か黒いものにぶつかります。
「先生!」
「こんな遅くになるとは!いったい何をしていたのかね!!」
 うれしくて抱き着くハリーの上から容赦のない怒鳴り声が聞こえ、ハリーは身をすくませました。
 でも彼が心配で怒っているのは、強く抱きしめ返す手から伝わっているのでハリーはほっとしてありがとうとつぶやきます。
 怒っている声とは異なる、優しい口づけにうっとりとするハリーはどうして遅くなったのか、遅い食事をとりながら問われ本当の事…寄り道をしたことを知られれば怒るだろうなと少し考えます。
「えっと…狼?のヴォルデモートにちょっと食べられかけちゃった。」
「なっ!!!!!」
 とっても端的に、一番衝撃的だったことをえへっと伝えるハリーにスネイプ先生は言葉を詰まらせます。

どこまで食べられたか…必死に本当にちょっと唇奪われただけだよと弁解するハリーを寝室に連れ込み、じっくりと調べるスネイプはこの日以降ハリーを一人で村の外に出すことはなくなったとさ。
おしまい 



はい。
1000番突破有り難うございます。
いやぁ~ただ単にヴォルデモートに獣耳を付けたかっただけという…。
そして赤ずきんハリーを落書きしていたらふと浮かんだ駄文です。
ちなみにいないとは思いますが、1000番お礼小説なのでフリーです。
こんなサイトですが、これからもよろしくお願いいたします♪
それでは短い挨拶ですが。(9・13)
20210206:かき直しました!ハリーと教授が寄りラブラブしているようにしたのと、口調などがらっと直しました。



戻る