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陽気な雰囲気が流れる時期が今年もやってきた。
そう。
ホグワーツ内で浮かれない人は少数派。生徒も先生も誰もが浮かれる…聖なる夜。
クリスマスだ。
しかも今年はホワイトクリスマス。
この日は是非とも思い人と二人共に過ごしたいもの。
それは…光の英雄でも…たとえ闇の帝王であっても思うこと。
 
 
ハリーはホグワーツでのクリスマスパーティーを過ごした後、
まだ静まらない寮内から透明マントを羽織り、そっと抜け出した。
目指す先は禁じられた森に少し入った小さな丘。
まるでその場所を隠すかのように生えた針葉樹は白い雪がのり、一枚の風景画のようにも見える。
 
丘に向かう足跡はまだ雪も積もっていないほど真新しいもの。
足跡の向かった先は、葉の落ちきった一本ケヤキがある場所。
そして…そこにはハリーの見慣れた一人の男の姿。
ハリーは走りやすいよう透明マントを脱ぎ、走り出す。
ハリーの気配に気がついたのか、深緑の髪をわずかな風に乗せ男…ヴォルデモートが振り向く。
ハリーを待つヴォルデモートに早く追いつくため、ハリーは自然と走る足を速めた。
ふと、雪に足をとられ勢いをそのままに腕を伸ばしたヴォルデモートへと倒れこむ。
 
「メリークリスマス…よかった間に合って。」
 積もった雪の上を走ったおかげか、ハリーは頬を紅潮させヴォルデモートに微笑みかける。
「そんなに急がなくとも…この距離だ。歩いても走ってもほとんど変わらないだろうが。」
「でも…ここに誘ったのは僕だから…。それにこんなに雪が降るなんて思って無くて。ヴォル、低体温だから待たせたら駄目だと思って…。寒いのとかって苦手だよね。」
 現にハリーを自らのローブの中に入れたヴォロデモートの身体は布越しにもわかるほど冷えている。
 
「確かに冷えるが…たいしたことではない。それに今は…」
 ヴォルデモートは軽々とハリーを抱き上げると歩き始める。
「お前の体温は高い。これぐらいで丁度良い。」
「僕は普通だよ。ヴォルが低いだけ。それに僕で暖をとらないでよね。」
 クス、と笑い頂上についたところでローブに入ったまま下りる。
 
「前にロン達と遊んでいる時偶然見つけたんだ。ここなら…ヴォルとあっても誰にも見つからないと思って。」
 見えるのは一段低くなった場所に生える針葉樹と…凍った湖。
 
 
寄り添い、静かな世界の中いつの間にか雪はやみ、月と星空が顔を出す。
満月に近い月明かりを雪が反射し、辺りはほのかに明るくなった。
キラキラと光る雪景色にハリーは眼を奪われる。
ふと、強い風が吹き、新雪を巻き上げ光を反射しつつ舞い落ちる。
「すご~い…。綺麗…。」
「今年の雪は結晶が良く見えるな…。」
 白い息を吐きながら風景に見惚れていたハリーは綺麗だねとヴォルデモートを振り返った。
その言葉は音になる前に屈みこんだヴォルデモートの口へと吸い込まれる。
ハリーは自然と目を閉じ、腕を男の首へとまわす。
幾度か重ね、ハリーはほっと息を吐いた。
 
ふと、肩越しにケヤキから生えるヤドリギの緑が雪の間から見えた。
「ヤドリギ…。」
「何だ。呼んだ理由の中に入っていると思ったが・・気付いていなかったのか?」
 ふっと笑うヴォルデモートの言葉にハリーは頬を寒さだけでなく染める。
「だって…前見たときは。」
なかったからと言うハリーの唇に再び重ねる。
 
「俗伝ではヤドリギは永遠の愛の象徴といわれ、その下で愛を誓うというものがあるが…。」
 そっとハリーの頬を指先で撫でる。
「この場で誓わなくとも…愛などと言う言葉のようにいつか冷めるような不確定な感情で無く、お前が必要だハリー。なくてはならない存在だ。」
「僕も…僕にもヴォルが必要。僕にもヴォルはなくてはならない存在。だから…ずっとずっと側にいてね…。」
 愛を囁くよりも深く、永久に離れない事をヤドリギの下で囁き、誓う。
そして…交わされる誓いの口付け。
月はそんな秘密の2人を優しく包みこんだ。
 
 
 
次の日、細長い独特の筆跡でHappy Xmasと書かれた、丘の上で月明かりの雪の中、寄り添う影があるクリスマスカードがハリーの手元へと届けられ、ハーマイオニーに散々問い詰められる事になったとか…。
苦笑する彼の左手には誓いのシルバーリングが煌いていた。
 
 
-fin



一ヶ月遅れです。
…ヤドリギでいいんですよね?
にわか知識で書いたものですから…(汗
なにはともあれ、
゜・*:.。.メリークリスマス .。.:*・゜゜・



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