毒の贈り物(Venoms Gift)

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(浸食率 0%)
 ちりっとした痛みに飛び起きた青年……ハリーは荒い息を吐きながらここがどこか、確かめるように見まわした。クリスマス休暇に入ってから見た、ロンの父アーサーが襲われる夢。その夢は夢ではなく、現実で……彼を保護するために不死鳥の騎士団が動いた。
 ウィーズリー家の兄弟と、夢を見た本人であるハリーはシリウスの家……ブラックの邸に集められ、冬休みはそこで過ごすこととなり……そこで割り当てられた寝室にいるのだと、ハリーは確かめてほっと息を吐いた。
 部屋にはロン達の寝息が聞こえる以外に、邸に潜む何かしらの音がさわさわと聞こえる。ただそれだけで、どうやら誰もが寝静まった時間のようだ。
 寝まい寝まいとしていたはずが、いつの間に眠ったのかハリーは覚えていない。今度こそ起きていないと、そう思って首を振り、何とか眠気に勝とうとするが誰もが寝静まった静かな夜、眠気に勝てずうとうとと頭が揺れて意識がぼんやりとしていく。
 今寝たらみんなを襲ってしまうかもしれない。そう怯えるが、二度目の眠りで見た夢はびっくりするほど穏やかで、怯えていたのがバカみたいなほどだった。そのまま意識は安心して……眠りへと落ちていった。



(浸食率 40%)
 もっとも憎むべき相手だというのに、いつもと全く違う反応で……混乱するハリーは別れ際に見せた笑みを思い返して頬を赤く染める。あの男が後に両親を殺し、数々の人を不幸にした最悪の犯罪者だというのに、ふいに触れてしまった心が……彼の苦悩がよくわかってしまったことが不思議でならない。
 彼の言うことは自分でもよく分かったし、勝手に抱かれる虚像に対し、不快になるのもよくわかる。だが、苛立つのではなくだったらやってやろうと憤るのも、それを実行できたことになんだか憧れのような……尊敬と言えばいいのか、そんな感情を抱いてしまい、ハリーは戸惑うしかない。




(浸食率 計測エラー)
 誰にも愛されず、誰にも必要とされない。誰も、誰もハリー=ポッターを見ず、死んでしまった両親ばかりを見つめるばかりだ。誰もハリーを見ない。見て、とそう努力するにはハリーは疲れていた。毎日の嫌みや陰口も、監視する視線も……みんなうんざりだ。


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