毒の贈り物(Poisonous Gift)

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(浸食率 0%)
 失敗した魔法薬を手にハリーは大きくため息をついた。たった一滴。そう、たった一滴だ。ガマガエルの油に落ちたのはハッカの葉に付いた朝露の雫。ただの水であるし問題ではないだろうと油を入れた瞬間、魔法薬は変な煙を上げて見る見るうちに鮮やかな青から、ねとねとした黒い液体に変化した。
「ハッカの葉に付いた雫がただの水だと思ったのかね? 材料の状態も確認せず、ましてや別の魔法薬でも使用される材料ともなるものを理解していないとは」
 ハッカエキス、とハーマイオニーが小声でつぶやくのを聞き、ハリーはあぁそういえばそうだったとスネイプの嫌味にぐっと歯を食いしばる。大体、油と水の相性が悪いのを知らないとは、と大きなため息をついて見せるスネイプに水と油、と思わずつぶやいた。
「まるで僕と先生みたいな関係でしたね」
 食いしばった歯の隙間から思わず零れた言葉にスネイプは意地悪気に目を細め、じっとハリーを見下ろす。



(浸食率 20%)
 作業するにあたって解放された手だが、なんだかまだ熱が残っている気がして、ハリーはぎゅっと唇を引き締めた。ぎしっ、という音にちらりと目を向ければスネイプの手が作業台を挟むように左右に置かれており、ハリーは動揺して茎を折った。ぽきりという音が予想以上に大きな音で、ハリーは集中しなければと手元の布をじっと見つめる。



(浸食率 40%)
 うとうとする中、深い声が耳元で聞こえた気がして、ハリーは顔を赤らめた。今まで意識したことなどなかった……いわゆるバリトンボイスと言うべきなのだろうか。まだ変声期もままならない自分達とは違う、深い大人の男の声。バーノンおじさんのような声とは全く違う、耳に残る響くような低音。まるで音が耳から侵食するようにハリーの中のスネイプという影を揺らし、形を変えようとする。
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