Enchanting scent

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 話室から出て、中庭へと出たハリーは誰もいないことを確認してベンチに座る。
跳ねた髪を揺らす風にすん、と匂いを嗅ぐか自分ではわからない。
どうしてこうなったのか…。それを思うと溜息しか出ない。


 練習後のシャワーを浴びて、さっぱりしたハリーの前にフレッドとジョージがずいっと何か小瓶を差し出してきた。
まだ研究中なんだけど、運動後に取るとすっきり疲れが取れる栄養ドリンクの味の感想が聞きたいと言われ、ハリーは軽く眉を顰めた。
この二人のことだからきっちり断るか、了承しないといつまでたっても解放してくれないと、しぶしぶ受け取り、透き通った薄黄色の液体が揺れる小瓶を軽く振る。
ただの味の感想であれば飲んだ方が早いと、水のようなそれに舌に残る味と考えて首を傾げた。
「さくらんぼ?なんか甘いだけであまり香りがないけど…。」
「よしフレッド、お前は何の匂いだ?」
「おれは…あーあれだ。隠れ穴の匂い。」
「あー確かに。やっぱり落ち着くといえばな。」
 何の味だったのかと不審そうに見るハリーに二人はずいっと前に出てくるなり、ハリーに鼻を寄せてにおいを嗅ぎだす。
突然ことに目を瞬かせるハリーはただ戸惑いしかない。
うまくいっただのなんだの話している二人にまさか実験台にされたのかと空になった小瓶を見つめる。
 自分のにおいを嗅いでみても特に違う感じはしない。それに自分のにおい、という物自体あまり意識していなかったがたぶん何も変わっていないはず。

「いまの…水?ってなに?」
「いま開発中の香水さ!」
「飲んで効果を得られるから、薄まるとかここに付け忘れたーってこともない。それに、周りに飛び散るとか倒れて絶叫とかもない!」
 とんでもないものを飲まされたのではないのかと、顔をしかめるハリーにフレッドとジョージは新商品なんだと得意げに語りだす。コロンなどをつけたことのないハリーにとってはまったくピンとこない。







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